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「五条君!?え、本物!?」
「…………」
「五条君?」
「っ!?ほ、本物以外何があんだよこのカス!!」
「カス……」


 Aは五条のその言葉を、目を点にしながら繰り返す。完全にすっぴん、乾かした際に些か膨らんだ髪、すらりと手足が伸びるラフな格好。考えてみたらそうだ。この時間帯で眠る直前だと言われたら、このような無防備な姿でもおかしくはない。五条は何度もそう自分に言い聞かせる。
 カッコつけて舌を出した手前、無様な姿は見せられないはずだった。しかしいざ視界に意中の相手のこのような格好が入ってしまえば、その意気込みも全て水の泡となる。五条にできることといえば、語彙力のない罵倒の言葉を浴びせることのみであった。


「任務後で疲れているよね。今日はすぐ帰って寝た方が……」
「……もう疲れ吹っ飛んだからいい」
「え、この一瞬で?凄いね……。じゃあ私の部屋入っていく?立ち話も何だし」


 疲れているであろう五条と立ったまま会話するわけにはいかないと考えたAは、先ほどの提案を口にした。しかしその直後に後悔してしまう。そこそこ信頼関係が構築されている夏油とは訳が違う。接し始めてまだ間もないような関係である五条を自身の部屋に招き入れるのは、貞操観念が低いと思われてしまうかもしれない。それは何だか嫌だと感じたAは、急いで訂正の言葉を口にする。


「ごめん今の」
「入れろよ」


 被せるようにして発された五条の言葉に目を見開いたAは、開いたままの口を閉じられずにいた。ぱくぱくと金魚のように動かした末に飛び出た言葉は、たった一言のみ。


「何もないですが、どうぞ……」
「ん」


 今更言い直すことなど不可能である。扉を開けてそのシンプルな部屋へと五条を招き入れたAは、グラスに茶を注いで机に2つ置いた。からりと氷が溶ける音が鳴るたび、あまりに部屋が静かであることが証明されているようでAの緊張が高まっていく。


「げ、元気だった?」
「ん」
「任務、終わるの早かったね」
「ん」


 何とか会話をしようと努めるAであるが、返ってくる言葉はそっけないものばかり。これには流石の彼女も参ってしまう。
 次の話題を探さなければ。そのようなことを考えながら顎に手を添えて考え込むと、突如顔に影が差し込む。何色にも染まらないその白い髪が、さらりとAの頬を撫でた。




「……お前ってさ、誰でも部屋に呼ぶわけ?」


 ぐらりと反転した視界が、Aの思考までもぐちゃぐちゃに掻き乱してしまった。

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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟
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叶華(プロフ) - 更新ありがとうございます。とてもとても嬉しいです。これからも応援しております (2023年4月29日 2時) (レス) @page28 id: 2f3b00e51a (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年7月5日 14時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれ - 面白いですね!!! (2021年7月16日 21時) (レス) id: 165d0fbcd6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぐー | 作成日時:2021年5月18日 1時

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