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「ねえ歌詞さん、いい加減に」
「くぴぽ」
「それが世の中の酸いも甘いも噛み分けた大人の誤魔化し方なのか!?」
「んー。まあ、大人って大体こんなもんだよ」
「大人になんかなりたくない！」
まあ、くぴぽで誤魔化されることはないとして。
しかし、誤魔化そうとしているならば、何をだ？
わからない。
わからないことを考えてもしょうがないので、やむなく私は、半ば強引にであっても、話を進めることにした。
「とにかく、歌詞さん――早くそらるを連れて来なよ。
相手は化け猫だ、どの道、そらるに解決してもらうしかないんでしょ？
勿論、そらるだって、そう簡単には動いてくれないだろうけど、私の血と引き換えだって言えば――」
「んー。そうかもねえ。しかし、悪いときには悪いことが重なるということもあるしねえ――不幸は友達を連れてくるとか――」
「………………」
言葉に鞘があるにもほどがある。
いい加減にして欲しい、こっちは焦っているんだ。
ことは、天宮のことなのに。
前回は必要とされなかった私だけれど、今回は、私は天宮に、はっきりと名指しで必要とされたんだ――絶対に、私は、そこにいなければならない。
必要なときに、そこにいる。
「……あれ？」
と。
私は、そこで、再び、思い出した――そうだ、さっき歌詞さんに訊こうとしたんだ。
今朝、浦田くんから聞いた、そらるの話――今となっては、嫌な予感しかしない話だけれど。
ていうか、いい予感なんかしたことねえ！
「歌詞さん……訊きたいことがあるんだけど」
「奇遇だねえ。僕もAちゃんから、訊かれたいことがあったんだよ」
「そらるはどうしたの」
「うん、それそれ」
ついに罪の自白を許された罪人のような、誰かに聞いてもらうことで楽になったというような、爽やかな笑顔と共に、歌詞さんは答えた。
「そらるくん、自分探しの旅に出ちゃった」
続く
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年9月6日 0時
