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「ふうん……最初はそんなに酷くなかったけど……か。
どうしたもんかね――けれど、そのストレッサーを突き止めている時間は、ちょっとなさそうだな。
複数の要因が絡んでいる可能性があるし、色ボケ猫は色ボケ猫で、相変わらず何言ってんだかわからないし――」
「……お前でもわからないんだ」
本人に聞いた方が手っ取り早いとか言っといて。
「わからないよ。ヒントは色々あったけど、確実なところはねえ――デリケートな話だから、適当な推測でものを言うわけにもいかないし――ふふん、所詮は猫の脳味噌ってことだ。
ただ、あれ、わざととぼけてる感じもあるんだよね――大本が委員長くんなだけに、油断できない」
「敵に回したくない男だからね――あいつは」
「敵に回ったわけじゃないさ」
ブラック天宮。
天宮の心が作り出した、もう一人の天宮翔太。
対照的――というより、対をなす人格。
翼には、『たすける』の他に、また、『対をなす』という意味もある――正しく異形の羽だ。
「しかし、歌詞さん、原因を突き止めたところで、そんなの、大した意味はないんじゃないの？
家族のことにせよ、それ以外のことにせよ――そりゃ、ストレッサーを取り除くことができれば一番の解決方法なんだろうけれど、そんなの、私やお前に、なんとかできるわけがないんだし――」
前回もそうだった。
天宮の家庭の問題など――解決できるわけがない。
どういう状態になれば解決したことになるのかさえ、想像もつかない。
他人が個人的に抱える事情になど、どうあっても踏み込めるわけがないのだ。
それこそ、傲慢である。
「相川や椎名のときとは違って他に被害が出るタイプの怪異なんだし……怪異のタイプは似てても、月崎のときともケースが違う。
結局、前回と同じで、その場しのぎの対症療法を取るしか、道はないと思うけれど――」
「そうだね。その通りなんだけれど、うん」
どうにも歯切れが悪かった。
なんだか歌詞さんらしくない。
障り猫に関して、まだ何かあるのだろうか――いや、歌詞さんは今日、話をする前から、ずっと、様子がおかしかったような気がする。
こんな太陽の出ている午前中から、屋外で活動していたというのが、もう異常と言っていい――
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年9月6日 0時
