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「こんなこと言われたって、反応に困るでしょ？
だからどうしたって感じだし、そもそもAちゃんには関係ないし――でも、なんだか、ちょっと同情しちゃうようで、筋違いの同情しちゃう自分に、罪悪感を覚えちゃうでしょ？
悪いことをしちゃったような、そんな……嫌な気分に、なったでしょ」
図星だった。
意地悪なんだよ、と天宮は言った。
「俺、Aちゃんで、憂さを晴らした」
「…………」
「Aちゃんを嫌な気分にして、すっきりしようとした――愚痴ですらないもんね、こんなの」
そんな気弱な天宮を見るのは、初めてだった。
顔面のガーゼも、手伝っているのかもしれない。
私の中での天宮翔太像というのは、とにかく、真っ直ぐで、強くて、真面目で堅実で、賢くて、公平で――パーフェクトだった。
しかし。
パーフェクトな人間など、いない。
「でも――そんなこと、よく知ってるね」
私は言った。
「そういうこと、本人には、教えないもんじゃないの？
二十歳の誕生日まで、秘密にしとくとか――」
「あけっぴろげな両親でね。小学校に入る前から、聞いていたよ」
天宮は、歩くペースを落とさずに言う。
「俺のこと、本当に、邪魔みたい」
「…………」
「でも、世間体ってものがあるからね。
相手が死んだからって子供を投げ出せないし、結婚するからって、子供を投げ出せないでしょ。
施設に預けようともしたらしいけれど――自分のエゴで年端も行かない子供を手放したっていう批難に、堪える自信もなかったみたい」
「………………」
そんなことを言われても――でも。
血が繋がった家族でも、それはあることだ。
否、全てが順風満帆な家族など、稀有もいいところだろう――どんな家族でも、不和と歪みを抱えているはずなのだ。
「だから、俺はいい子になろうとした」
天宮は言った。
「小学生の頃から、ずっと真面目な委員長――なろうとしたものに、ちゃんとなれてるよね。
おりこうさんじゃん、俺。あはは」
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年9月6日 0時
