How to love me?【赤緑】

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罪なことをしてもうたんやな、って自分でも思う。

教育実習生やのに生徒とキスなんかして。

これって結果的に弄んでもうたってことやんな？
謝らなくちゃいけない。


「ありがとう。錦戸先生にそう言って貰えるのはめっちゃ嬉しい。でも……」

「錦戸先生の思いには応えられへん、やろ？」



何で分かったん。
驚いて見ると、錦戸君は眉をハの字にして、困ったように笑った。



「俺、分かってたもん。あの頃から、先生には好きな人おるんやろうなーって」

「……何で」

「自覚ないん？放課後、化学室にいる時いっつも先生そういう目してんねんもん」

「嘘」

「ホンマやって。あーあ、振られるって分かってたけど……うん」



錦戸先生は俯いてのんびり歩き出す。
俺もその後をついてくと拒否された。

すん、と短く鼻をすすって、先生はにこっと振り向く。
甘みを含んだ瞳に薄い涙の膜が張っている。

日光に反射して、その涙がキラッて光った。
それが凄く綺麗に見えてもうた俺は不謹慎かもしれへん。


「先生って、残酷ですよ。ホンマに」

「ごめん」

「……ありがとうございました」

「え？」

「先生を好きで幸せでした。辛かったことの方が多いですけど」

「何やねん。上げたのに急に下げて」

「やって俺、先生に片思いしてからずっと失恋してたんすよ？先生には既に好きな人おったから」

「うん」

「先生、最後に約束だけ守ってください」



錦戸先生は口元に微笑みを浮かべて、近くの掃除ロッカーに身を隠した。
不幸か幸いか、生徒たちは部活で廊下には人がおらへん。

好きな人がおるのに、流されてく俺は狡い。
あの店辞めてからそこら辺しっかりしようって決めたのに。


「これでもう、忘れますから」



お願いします、って捨てられた子犬みたいな目で見つめられたら。

ちゅ、って軽い触れるだけのキスをした。
その瞬間に先生の頬に一筋の涙が零れて。

ごめんなさい。
無責任なことをして先生に辛い時間を過ごさせてもうた。

懺悔の意味を込め、袖で涙を拭く。



「あは、俺、先生のこと忘れるの無理かも」



ごめんって謝るのは何か違くて、うんって相槌を打つことしか出来ひん自分が嫌。


「だから、気持ちを閉じ込める。溢れへんように鍵かけて、浮かんで来んように奥底に沈ませる」


凛とした力のある声と瞳。
俺はまた無責任に、錦戸君と出会えて良かったなんて簡単に思った。


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