4 ページ4
『人生の夏休み』
ようやく長い受験戦争が終わって、そんな謳い文句が有名な年齢になった。
でも俺は奨学金返済という大きな課題があって。
社会人になってから返すのでもエエんやけどなるべく早く返したい。
学生が手っ取り早く稼げる仕事なんて限られている。
学生や、言うても18歳越えてる俺が就いたのは夜の仕事。
俺が働いているのは俺のイメージとは違う場所。
想像してた夜の世界はネオンで輝く、危なさと華やかさが共存しているきらびやかな世界やった。
けど、バイト先はネオンの看板が建ち並ぶ繁華街の裏道にあるから、街頭以外の光はないような暗い所。
男を男が相手する、小さな世界を相手にしたお店。
18歳の頃からもう３年もここでバイトしている。
３年間も夜の街で働いてりゃ奨学金なんて完済してもうたけど、俺はこの店を辞められずにいた。
すばる君との出会いは突然やってきた。
そう、あれは確か大学1年の秋やった。
「空いてる奴おるか」
休憩室で私服に着替えている時、オーナーの村上さんがひょこっと顔を出した。
「ごめん大倉、私服でエエから出てくれへん？手当出しとくし」
「はい、今出ます」
とにかく短期間で稼ぎたかった俺は手当という言葉に釣られて、私服のまま店に出た。
私服で店に出たのは後にも先にも、この1回だけ。
その1回がすばる君だった、という事実でさえも俺の心を揺さぶる。
店に私服で出るのが少し恥ずかしくて俯きながら出ると、チッてでっかい舌打ちが聞こえた。
「ヒナ、お前新人教育してんのか」
「すばる、奥さんと何かあったんか知らんけど大倉に当たらんといて」
すばる、と呼ばれた人はまたでっかい舌打ちした。
「おい大倉、顔上げろや」
怖い。
何でこんな怖い感じの人の相手せなアカンの……。
怖さから顔を上げると、俺は息を呑んだ。
重たい黒髪の前髪から覗く大きな目。
猫みたいに少しつってて、力強い目をしてる。
スッと通った鼻筋に、きゅっと結ばれた薄い唇。
横山君とかヤスとかに会ってるから端正な顔立ちに免疫が無かったワケじゃないし、別に、特別タイプの顔でもない。
それなのに、その人に見つめられると、俺はいとも簡単に言葉を失ってもうた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れいんと。(プロフ) - ヒイM45さん» はじめまして。私も一生、赤緑が担当です。赤緑作品は新作が少なく、更新が途絶えてるものが多いので寂しいですよね😢いつか甘々な赤緑を書きたいと思っています。 (2022年3月27日 8時) (
レス) id: e2762dc7c7 (このIDを非表示/違反報告)
ヒイM45(プロフ) - はじめまして。いつも更新を心待ちにしていた未練タラタラ赤緑強火です。素敵な作品をどうもありがとうございます。完結してしまった喪失感はありますが、また是非是非！貴重な赤緑作品をお願い致します🥺赤緑バンザイ！！そして橙緑も楽しませて頂きます♪ (2022年3月26日 22時) (レス) @page43 id: 0c2aba4953 (このIDを非表示/違反報告)
れいんと。(プロフ) - 羽世さん» ありがとうございます！私も強火すば倉担なんですけど、最近はすば倉担そのものが少なくなってる気がしてるんです〜😭ふっふっふ、ちょっとお待ちくだされ。 (2022年2月19日 16時) (レス) id: e2762dc7c7 (このIDを非表示/違反報告)
羽世 - んんん！最高です……。すば倉担なのですば倉の新作があって嬉しいです😢 次話からtornの予感もして楽しみです。更新待ってます！！ (2022年2月19日 16時) (レス) id: 5dae2b6d43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
