How to love me?【赤緑】

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「ねえ」

「何や」


二人の大人が寝るには狭いベッドに、背中合わせになって眠る。
背中が触れてるから、信ちゃんが返事をするとその振動が伝わってきた。



「そんな顔、ってさっき信ちゃん言うたやん？」

「おん、言うた」

「それってどんな顔？」

「そうやなあ……上手く言い表せへんけど、」

「うん」

「……死にそうな顔、かな」

「そんなヒドイ顔してるん？俺」

「最近ようしてんで。だから心配してんねん」



ホンマはもっと聞きたかったけど、信ちゃんがふわあ、って欠伸したから引き下がることにした。



「おやすみ」

「ん、おやすみ」



おやすみって言うておやすみって返ってくるん、エエな。
ベタな形でやけど、隣に人がいるって安心感はやっぱ人間に必要なんやなって思った。

目を閉じると、すぐに信ちゃんの規則正しい寝息が聞こえる。
寝んの早すぎやろ。
･･･…疲れてたんかな。

疲れてたのに俺のこと気にかけてくれたんか。
そう思うと申し訳ない。
ありがとう、って誰にも聞こえへんような声で呟いた。



それにしても。
死にそうな顔ってなかなかやな。

すばる君のこと考えてる時、そんなに思いつめた顔してんのか、俺。
死にそうな顔してたんやったら、そりゃマルちゃんにも信ちゃんにも心配されるわな。



改めて、信ちゃんに将来のこと聞かれたらほっといてよ、ってなったけど。
信ちゃんに言われなかってら、将来のこと考えることから逃げ続けてたかもしれへん。


雨音が段々大きくなる。
雷もゴロゴロ鳴り出してきたけど、背中から伝わる温かさのおかげで怖くはなかった。




俺は決めた。
教育実習が始まる来月、このバイトを辞める。

すばる君のことなんて忘れてやるもん。

『忘れようとしてる時点でまだその人のことが好きなんやで』

だいぶ前にマルちゃんが寂しそうに教えてくれた言葉。
それはきっと、マルちゃん自身への言葉やったんやと思う。

でも今はその言葉が俺にのしかかる。



今はまだすばる君のことが好きでも、いつかはスッパリ振り切るねん。

街ですれ違っても気付かへんぐらい、忘れてまえばきっと楽になるから。

明日、信ちゃんにそう伝えよう。
すばる君を見る前に言わないと、俺は簡単に決心が揺らいでまうもん。




一度そう決意したら一気に心が軽くなった。
もう怖くない雨音を聞きながら、ゆっくり微睡みの中へ消えていく。




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