How to love me?【赤緑】

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一人暮らしのアパート。
小さな玄関の壁にはオレンジ色の絵画が飾ってある。
部屋からはマルちゃんの匂いがして、すぅっと息を吸い込んだ。

「マルちゃんの匂いって安心する」

まだ玄関で靴を脱いでるマルちゃんの肩に顎を乗っける。
ふわりと香るマルちゃんの匂いと、暖かさが俺の心の隙間を埋めてる気がした。

「もー、早いて。もうちょい待って」


靴を脱ぎ終わったマルちゃんはくるりと向きを変えて、ようこそ、って俺を部屋に案内した。
もう何度もこの部屋で朝を迎えたって言うのに、マルちゃんは毎回この仕草をする。

「何か、飲む？」


おやつもあるけど、ってマルちゃんは時計を見ながら言った。
俺は昼飯を食べたばっかやのに、食べる！って明るい声を出す。
マルちゃんが好きって言うてた笑顔で。

「バームクーヘンのレモン味〜」

「何それ、初めて食べる！」

「俺も。美味しいか分からへんけど……有名店やからたぶん美味しい」

「あ！ここ知ってる！！テレビで3時間待ちやって言ってた。誰からか貰ったん？」

「まぁ……うん」


マルちゃんは歯切れ悪そうに頷く。
予想通りやん。
俺は待ち構えてたみたいに、マルちゃんのほっぺに軽くキスをした。

驚いた様子のマルちゃんに俺は言ってやる。
マルちゃんが好きって言うてた俺の笑顔の口角、目尻のシワを思いだしながら。


「嘘つき。自分が並んで買ってくれたんやろ？……俺のために」

「……大倉に食べて欲しくて」


好きだ、と思った。
自分のために何かをしてくれるこの人が好きやと思った。
これが恋愛的なのか友情的に好きなのかは判断出来ひんけど。

それでもやっぱり、俺の１番はすばる君だと心の奥で分かっている。

「いただきます」

「召し上がれ」

「マルちゃん、あーんして」

「え！」


戸惑いながらもマルちゃんは一口大のバームクーヘンをあーんしてくれる。
俺は一口でぱくりと食べて、ぺろって唇を舐めた。
挑戦的に見つめれば、マルちゃんの瞳はゆらりと揺れるから。

「マルちゃん、キスしてエエ？」


そっと唇に口付けをするだけ。
それだけでマルちゃんは次に俺が何したいか察してくれる。

すばる君のせいで傷付いた心を人目から隠すように、そっと寄り添ってくれる。
俺はその代わりに、マルちゃんの傷付いた心の隙間を埋めるように身体を重ねる。

マルちゃんにも叶わない恋の相手がいるの、気付いてないとでも思ってた？
傷だらけのクズ同士、親友って名前が１番ピッタリやと思わへん？


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