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人気のない廊下に光を漏らす第二会議室。
かちり。
時計の針が動く。

来てくれるやろうか。
もし来てくれなかったら俺はいつまで待つつもりなんやろうか。

かちり。
時計の針がまた一刻を刻むと9時になった。
その瞬間、がちゃりとドアが開く。

「……まだおったんや。」

「はい。」

「……。」

「チーフ、全部教えてください。」

チーフはまだ悩んでるみたいやったけど、俺が押すとなにかを吹っ切ったような表情になった。

「長くなるけど最初から話してエエかな。」

「もちろんです。」

まるで今から事件の真相を暴く名探偵みたいな前置き。

さっきまでの少し緊張したような顔と違って、ふっと力が抜けたようなチーフの優しい眼差し。
その目は俺の心を一瞬で射抜く。

見つめられるだけでこんなにもドキドキして、目を逸らしてまいたくなるなんて。
俺が目を逸らす前にチーフが口を開いた。


「大倉君はさ、“愛”の反対って何やと思う?」


“愛”の反対?
急にどうしてそんな話になるんやろう。
チーフの質問の意図が分からんくて戸惑いつつも、頭をフル稼働して考える。

……日常でそんな愛について考えることなんてないから、安易な答えしか思い浮かばん。


「憎悪、ですか?」

「ちゃう。」


チーフは聖母みたいな慈悲深い表情で否定した。
そして、のんびりとまるで空気を操るみたいに言葉を紡ぐ。

「“愛”の反対は“無関心”やねん」


ドキッとした。
その言葉は現代人の課題を鋭利に突き刺してるようで。
その人を愛することの反対は、その人に何の興味も抱かへんこと。

「……まぁマザー・テレサが言った言葉なんやけど。」

ふふ、と可愛らしくチーフは笑うけど。
何だか誤魔化されてるような。
流されているような。

「何か論点ずらしてません?」

「最後までのんびり聞いて。ホンマに長くなるけど……」


チーフはさっきも聞いた前置きを再び繰り返す。

.

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れいんと。(プロフ) - つらきさん» コメントありがとうございます!更新速度が遅くて申し訳ない…。んー、どうでしょ。その辺りにも触れていきたいと思っています笑 (2021年10月3日 9時) (レス) id: e2762dc7c7 (このIDを非表示/違反報告)
つらき(プロフ) - 大量更新ありがとうございます〜!!これからの展開が楽しみです。青さんが何を考えてるのか全然わからない笑 橙さんは少し緑のことが好きだったのかな、だから出勤してきたのかな、と考えを巡らせてます。更新頑張ってください! (2021年9月27日 11時) (レス) id: 5dae2b6d43 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れいんと。 x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年9月5日 11時

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