17 ページ17
「なあ、」
「はい」
「何で大学生がインスタのストーリーに飲酒してるとこ載せるか、分かる？」
「飲酒が、かっこいいと思ってるから、でしょうか。喫煙も見た事あります」
チーフはカチッとマウスをクリックしてから俺と目を合わせた。
「そう。20代前半は飲酒がかっこいいと思ってる人が減少傾向にありつつも、一定数おる」
「あ。…日本酒をかっこいいと思わせる？」
「そういうこと。日本酒飲んでる大人はかっこエエ、って印象を持たせたい」
コンセプトはこれでいこ、ってチーフはにっこり笑った。
語感が良くて伝えたいことが端的に伝わるキャッチコピーって案外難しい。
2人で話し合いながら案を出していく。
…こういう、0から1を作り出してる感じ。
何かを自分の手で生み出すこの感覚が好きやった、俺。
営業部に配属されて忘れてた感覚を一気に思い出す。
やっぱり俺は、この会社に入って正解やった。
チーフの怒りを買ってもうたけど、ほら、もうこんなに普通に話せてる。
周りの人たちにもちゃんと順を追って説明すれば誤解は解ける気がする。
噂やってそんなに長く続かへんやろうし。
お昼ご飯を食堂で済ませた頃には、キャッチコピーも決まって
デザインの原案がうっすら出来始めていた。
「チーフ、喉渇きません？僕何か買ってきますよ」
「あ、ホンマ？じゃあコーヒーお願い」
はい、って小銭を渡される。
あまりのそのやり取りのスムーズさに、逆に俺が戸惑ってまう。
やっぱりチーフは忘れてるんやろうか。
「これでエエかな」
自販機には３パターンのコーヒーがある。
どのメーカーが良いか分からんけど…この青いラベルのでエエよな？
チーフ、いつもこのコーヒー飲んでるし。
俺は何飲もうかな、ってお茶とコーヒーのボタンを往復させると、自販機に影が出来た。
「…丸山さん」
丸山さんは俺の左手にあるコーヒーを見て、ハッと短く笑った。
チーフがいつも飲んでるコーヒーを持ってることを知られたくなくて、
今さら隠したって無駄やのにそっと隠した。
「何で丸山さんも出勤してるんですか…」
「別に。大倉君に関係ないやろ」
そう、線を引かれたら俺はもう何も言えへん。
「はよ、してくれへん？章ちゃん待ってんねやろ」
「あの、僕とチーフはそんな関係ちゃいます」
「…大倉君はただの上司とキスすんねや」
「キスしてません！」
丸山さんに冷たく見つめられて理解する。
…この人との間にある誤解は解けへん。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れいんと。(プロフ) - つらきさん» コメントありがとうございます！更新速度が遅くて申し訳ない…。んー、どうでしょ。その辺りにも触れていきたいと思っています笑 (2021年10月3日 9時) (
レス) id: e2762dc7c7 (このIDを非表示/違反報告)
つらき(プロフ) - 大量更新ありがとうございます〜！！これからの展開が楽しみです。青さんが何を考えてるのか全然わからない笑 橙さんは少し緑のことが好きだったのかな、だから出勤してきたのかな、と考えを巡らせてます。更新頑張ってください！ (2021年9月27日 11時) (レス) id: 5dae2b6d43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
