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「……もう言いたいことはあらへん?」


チーフはそう言って首を右に傾けた。
茶色の髪がサラリと揺れる。
……チーフはきっと自分の容姿を理解して振る舞ってんねや。

小悪魔。
いや、性格のことを考えると小悪魔どころちゃうけど。


『ねぇ、あれって……』
『わ、珍しく残業してると思ったら安田チーフと……』
『公私混同で草なんだが』

ヒソヒソと陰口が聞こえる。
声の高さと言葉遣いからして若い子かな。
こないだはパートのオバサンとも仲良くしてたし…この人、人懐っこ過ぎひん?



「ないなら俺行くけど」

「あ……ない、です。お時間ありがとうございました」

「ん。外暗いから気を付けてな」


微笑みと香りを残して、チーフは廊下を歩いて行った。
……何でチーフはいつも通り、というかいつもよりも優しくしてくれんのやろ。

罪悪感から?



「ねぇ、ちょっとアンタさ、」

「はい、」


アンタ、って話しかけられる。
振り向くとたぶんさっき陰口叩いてた女の子2人組。

2人とも髪の毛巻いて、爪の先まで可愛さを追及したような…キラキラした風貌の子やった。
こういう子は、仲間意識が高すぎるから苦手やったりする。



「チーフと付き合ってるんでしょ?」

「いや、それは……」

「何よ、違うって言うの?アンタとチーフがキスしてる所見たって証言あるんだからね!」


2人いるのに、ポニーテールの子だけが喋って、ボブの子はその子の後ろに隠れていた。
まるで援護されてるように。俺が敵であるかのように。


「ミユカ、本当にチーフのこと好きで…チーフに恋人いるって知った時もチーフが選んだんなら素敵な方なんでしょうって……ねぇ?」


ポニーテールの子に聞かれて、そのミユカって子は小さく頷いた。


「なのに……何でアンタなの?」


何でアンタなの?
それはたぶん俺の男という性別を否定したんやろう、けど。
チーフと付き合ってる、なんてガセ情報への文句なんか聞き流せるくらいの強さはあるはずなのに、その子の言った言葉は俺の深い所に突き刺さった。

その子から発せられた言葉の刃は音もなくズブズブと俺の心の芯まで傷つけていく。


「無言とかまじムカつく。行こ、ミユカ」


ミユカさんは涙をたくさん溜めた大きな目でキッと俺を睨んで。
ポニーテールの子に、大丈夫?とか聞かれながら去って行った。

何で俺がこんなに傷つかなアカンの。
何でこんなに、



.

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れいんと。(プロフ) - つらきさん» コメントありがとうございます!更新速度が遅くて申し訳ない…。んー、どうでしょ。その辺りにも触れていきたいと思っています笑 (2021年10月3日 9時) (レス) id: e2762dc7c7 (このIDを非表示/違反報告)
つらき(プロフ) - 大量更新ありがとうございます〜!!これからの展開が楽しみです。青さんが何を考えてるのか全然わからない笑 橙さんは少し緑のことが好きだったのかな、だから出勤してきたのかな、と考えを巡らせてます。更新頑張ってください! (2021年9月27日 11時) (レス) id: 5dae2b6d43 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れいんと。 x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年9月5日 11時

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