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SJ side
Aの部屋を出て自分の部屋へ向かう途中、庭に咲く薄紫の花が目に止まった。
SJ 「この花好きって言ってたな… 」
病気で亡くなった最愛の妻はこの花が好きで、よく2人で一緒にお茶を嗜みながらこの花を見ていた。
彼女はいつも柔らかく微笑んだ。この花を見る度にその淡い色が彼女の笑顔そっくりだと思った。
一生の愛を誓った彼女が亡くなってからもうすぐ1年になる。
亡くなった直後は、彼女が亡くなったという現実を受け入れられず、彼女の名前を呼び、屋敷の中にいる時も彼女の姿を探した。
妻がいないことに気づく度に、俺は深く傷つき、哀しみに苛まれた。
弟たちにも随分と心配をかけてしまった。それでも俺は長男だから、これ以上弟たちに心配をかけさせたくないと思い、妻を失った気持ちを無理やり胸の奥にしまった。
たとえ、もうこの世に居なくても、二度と彼女と会うことが出来なくても、彼女の手を握ることが出来なくても、俺の心の中で生き続ける彼女をこの先も愛していく。
それなのに、あの感情はなんなんだ。
テヒョンに刀を向けられて怯える彼女を見た時、テヒョンに対して無性に腹が立った。
気がつくと俺はテヒョンに対して刀を向けていた。たった今、1人の男の命を奪ったばかりの刀を。
テヒョンが刀を下ろした後、俺は彼女が無事だったことに安堵しつつも、もっと早く来ることが出来なかった自分に苛立った。
さっきだって、美茶園で会った男がテヒョンだったと聞いて、腹の中で黒い感情が湧き上がってきた。
俺はAのことをどう思ってるんだ。
ふと、Aのふわりと笑った顔を思い出す。グクに謝ってと怒っていたA、チェリョンと楽しそうに話すA、テヒョンに刀を向けられ怯えるA…
コロコロ変わる彼女の表情を見る度に、俺の心は大きく揺れる。
彼女が嬉しそうにしていれば俺も嬉しい。
彼女が怒っていればどうしてそんなに怒るのか気になってしまう。
彼女が怯えていれば彼女を怯えさせるものは許せないし俺が守ってあげたい。
SJ 「俺は…… 」
その答えが喉まで出かけたとき、薄紫の花が風で揺れた。
妻の柔らかく微笑む顔が浮かぶ。
SJ 「……そうだ。俺の愛する人は君だけだ。君だけを愛してる。 」
そう呟いた俺の言葉は、1番聞いてほしい人に届くことなく虚しく夜の庭に消えていった。
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まちゃ(プロフ) - hirotdmさん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけているという言葉がとても励みになります!主人公ちゃん、高麗時代に来てから大変なことばかりですよね… 読者のみなさんもヒヤヒヤしますよね。 (2021年6月3日 0時) (レス) id: 81774260e0 (このIDを非表示/違反報告)
hirotdm(プロフ) - ここまでとっても楽しく読ませて頂いてます!これからどうなっちゃうんだろうって益々楽しみです。主人公ちゃんが痛い目に合うのがかなりのレベルなのでジンさんじゃなくても心配になります。 (2021年6月2日 13時) (レス) id: 69a4a38723 (このIDを非表示/違反報告)
まちゃ(プロフ) - avrillさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!! 頑張ります(^^) (2021年5月8日 10時) (レス) id: 9254a9bcf9 (このIDを非表示/違反報告)
avrill(プロフ) - 今後の展開がとっても気になります!楽しみにしているので無理なく頑張ってください! (2021年5月8日 4時) (レス) id: dd6824d8fc (このIDを非表示/違反報告)
まちゃ(プロフ) - kokoさん» ありがとうございます!! 念願の初コメントいただけて泣いて喜んでます(涙) 頑張ります! (2021年5月8日 1時) (レス) id: 9254a9bcf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まちゃ | 作成日時:2021年4月29日 22時