58. ページ8
森本くんに買ってもらったお好み焼きを
ありがたく食べ終わる頃には
もう人はまばらで、
学校全体が1日を終える準備に入りつつあった。
そろそろ戻ろっか、という
森本くんの声に頷いて、歩き出す。
教室に着く手前で、
森本くんは隣のクラスの女の子に
声をかけられて、
私に申し訳なさそうな顔のまま
いなくなってしまった。
途端に心細くなってしまって、
急いで教室に入ると、
私を見つけたジェシーくんが走ってきてくれる。
「慎太郎は？」
「もうちょっとしたら帰ってくると思うけど」
「そっか、回れた？」
「少しだけ。お好み焼き、一緒に食べた」
よかった、と笑ったジェシーくんは、
真由心配してたよ、と心配そうに眉を下げた。
「もちろん、俺もね」
「ごめんね、もう大丈夫」
無理して笑っている自覚があるくらいの笑顔を
ジェシーくんに見せると、
無理しなくていいよ、とさらに眉が下がってしまう。
あっという間に陽が落ちて始まった後夜祭は、
一緒にいようと声をかけてくれた
ジェシーくんたちとずっと一緒にいた。
真由ちゃんは私の顔を見て少し泣いた後、
ずっと私のことを心配していて、
同時に先生に対してずっと怒っていた。
本当は。
私のために泣いて、
怒ってくれる真由ちゃんや、
心配して私のために笑っていてくれる
ジェシーくんたちがいるだけで、
私はもうさっきよりは随分平気だった。
途中で私たちを見つけて合流した森本くんが、
静かに私の肩を叩く。
「俺さ、劇の途中にさ、松村見つけられたか訊いたでしょ？」
「うん」
「松村、昨日言ってたのよ。明日楽しみだって、絶対時間見つけて観に行くからって」
ただの俺の勘で気休めにはならないかもしれないけど、
と森本くんは少し地面を蹴って
私と目を合わせた。
「あれは嘘じゃなかったと思う」
すぐに返事をすることはできなかったけれど、
その代わりに1粒だけ涙が溢れた。
松村先生は私だけの幻想なんかじゃなかったことが、
先生が森本くんにまで声をかけるくらい、
そのくらい楽しみにしていてくれたことが
すごく嬉しくて。
「ありがとう。私も、そう思う」
口を開いて飛び出た言葉に、
森本くんが優しく頷いたのを見て、
私も少し清々しい気持ちで花火に目を戻した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 365人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はねこ(プロフ) - moonさん» moonさん、お読みいただき、コメントまでありがとうございます（ ; ; ）この小説！というものは特にないのですが、町田そのこさんの文章が好きで影響を受けているかもしれないです。また、余談ですが歌詞を読むのも好きです！今後ともよろしくお願いします(^^) (6月25日 19時) (
レス) id: 9f2c7cf6f4 (このIDを非表示/違反報告)
moon(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！( ´•̥_•̥` )はねこさんが書かれる文章が綺麗で、とても引き込まれるのですが、普段読まれていたり影響を受けた小説とかってありますか？読んでいて気になりましたので、差し支えなければ教えていただきたいです> < (6月25日 3時) (レス) id: 5847df65e8 (このIDを非表示/違反報告)
はねこ(プロフ) - 翡翠さん» 翡翠さん、お読みいただき、嬉しいコメントまでありがとうございます！頑張って更新して参りますので、引き続きお楽しみいただければ幸いです(^^) (5月18日 22時) (レス) id: 9f2c7cf6f4 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 深夜に読んで号泣してます（т-т）松村先生帰ってきて~(;_;)(;_;)(;_;) 素敵なお話ありがとうございます(><)更新楽しみにしてます、！ (5月17日 2時) (レス) @page6 id: 6c0d9e0967 (このIDを非表示/違反報告)
はねこ(プロフ) - まゆみんさん» まゆみんさん、コメントありがとうございます。先ほど更新致しました。表示されておりますでしょうか？ (5月15日 0時) (レス) id: 9f2c7cf6f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はねこ | 作成日時：2022年9月7日 0時
