渇いた喉は、紫の所為

不思議な男 ページ1

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若い女性など見当たらない駅でくったくたの服を着ている私を引っ掛けようとする男なんていない


ここに来る人間たちは今日、人生の勝負に挑む者、雰囲気を楽しむ者、適当に時間を潰しにきた者等に分けられるだろう


おそらく私は一番最後に分類される訳で、こんなところを庭にするような教育をさせてきた大人達に物申すことももう出来なくなっているのだけれど



番号が３つ並んだ券を買って、ぼーっと戦いを見守っていれば




『嘘、でしょ』




人生何があるか、わからないもんで




"おめでとうございます！こちら250万円です"




にっこにこの窓口のおばちゃんに換金してもらった紙切れは、信じられない金券となって私の元に現れた




変に狙われないように、いそいそとトートバッグにそれを詰め込んでATMへと急いで……





『うわ、』

「うわ、って何よ？ひでぇなぁ。俺のアドバイス、凄かったっしょ？おねーさん」



煙草を、ふぅーっと蒸しながら、くたくたのTシャツにピアスが片耳に２つ。灰色のスウェットにサンダルを履いた茶髪のお兄さんがニヤつきながらやってきた



『さっきは…どうも』


「当たったっしょ？3連単」




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────それは1時間前



電子掲示板を眺めながら、知識の全くない私は気分で適当に選ぼうと


『どーれーにーしよーうー、』

「ねぇ」

『ん？』


いつの間にか隣に立つ彼の気配は感じなかったから、ただただ驚いた


「おねぇさん、わかんねぇんでしょ？とりあえずさ、5と9と1で3連単。買っときな？」


『は？』


「ふは、すっげぇ鬼の形相。まぁ、信じなくてもいいけど〜」


ひらひらと手を振りながら背中を向けて去っていくから訳がわからない


『……なに、あいつ』



それでもなんだか、気になって


買ってみたらまさかの展開。という流れ






無視するわけには………いかない




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「買ってくれたんだ？俺の言ったの」


『ああ、まぁ』


「なんで信じてくれたわけ？」


『別に……どれでもよかったし』


「ふは。ふぅん、まぁいいや。当たったんならそれで」


『……私、急いでるんで』



彼の横を早歩きですり抜けようとすると「おっとぉ、」とぴょん、と飛び跳ねて前に立ち塞がる


『あの、………邪魔なんですけど』


「ふは、そんな警戒すんなってぇ。心配しないで？金分けろなんていわねぇからさ」


『……え？』





「その金、機械にぶち込んだら、俺と






……飯食ってくんね？」






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