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『あ、私、そろそろ帰るね』
「え！あぁもうこんな時間か…あー、じゃホテルまで送る」
『いいよ！歩いてすぐだよ？それに後輩達の面倒を見るのも仕事のうちでしょ？』
照は少し悩んでから「気をつけてな？ここは俺に出させて、また飲もう」と会計の札を手に微笑んでから、先程の女の子に「席どこ？」と聞いて立ち上がった
鞄を持って席から立ち上がる頃には後ろから"あの綺麗な人ほんとに彼女じゃないんですかー？"と照がいじられている声が聞こえて、微笑ましい
ラウールくんも今はあれくらいの年齢だなんてふとよぎったけれど、ぽつ、ぽつと雨が降り出したから、傘のない私は帰りを急ぐことにすぐ考えは流されていた
濡れるネオンの光る街並みに、行き交う人の騒つく音と強く降り出した雨が打ちつける音
久しぶりの都会の雰囲気に想いを馳せながら足速に歩いていると予約していたホテルの看板が見える
そんな時、ザーーーと響く中にぴちゃ、ぴちゃ、と走る靴が水を弾く音が近づいて、鞄を持つ手をぐ、っと引かれる
急激な進行方向と真逆の力に、ヒールの私はバランスを崩すけれど、ふんわり大きな身体に抱き止められて、すぐ横のシャッターの閉まっている軒先に促された
強く降る雨で見上げられなかった、その顔は紛れもなく、私が一番会いたくなかった人だった
「Aちゃん、
やっと見つけた」
当時とは違う真っ黒な髪は完全に濡れていて、ぽた、ぽた、と雫が落ちている
白い肌に変わらぬ凛とした顔立ちは、あの頃よりさらに大人びていた
名前を呼ばれて肩が、びく、っと震えると、抱きとめられていた腕の力が少し緩んだ
"逃げなければ"
焦った脳が叫んで、目の前にあるタクシーが視界に入ると、彼の腕を振り解いてまた雨の中に飛び込んだ
「ちょっ、まって！」
扉を開けたままお客を待つタクシーに濡れた身体ごと滑り込み『出してください』と自分で扉を閉める
「ねぇ！待って、話しよう、Aちゃん！」
発車と同時に私の乗るドアをガンガン、と叩いて叫ぶ彼に目は合わせられなくて、雨が叩きつける中ゆっくりと動き始める車内に聞こえる声は、だんだんと小さくなった
しばらく進んだ後に後ろを振り返る
強い雨に打たれたまま、ずっとこちらを見る彼の姿は後ろの車列で見えなくなった
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kae(プロフ) - あいさん» あい様（ ; ; ）いつもいつも優しいお言葉ありがとうございます。紫さんを書くたびに、あい様のことが浮かんで、気に入っていただけるかなぁ、なんて思うようになっております。笑 共感していただいて光栄です！これからもぜひよろしくお願いします（ ; ; ） (2021年9月8日 14時) (
レス) id: 03cd483279 (このIDを非表示/違反報告)
あい - そして、またあとがきにお名前を書いてくださり感謝致します！ただのファンなのに！私、kaeさんのあとがき、共感できたり結構好きです(笑) (2021年9月8日 14時) (レス) id: b3ed499758 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 完結から遅れてごめんなさい！お疲れ様でした。紫大好き！の私に匂わせもしていただき嬉しかったです(笑)二人分のお話を繋げていたり、今回のシリーズもとても読みごたえありました！kaeさんが表の彼等の言動をとても捉えているから、読み手も想像膨らみ楽しめます！ (2021年9月8日 14時) (レス) id: b3ed499758 (このIDを非表示/違反報告)
みりぽん - kaeさん» いえいえこちらこそ本当に楽しませてもらってます！！ありがとうございます(^^)短編集楽しみにしてますね(照) (2021年9月6日 23時) (レス) id: 5ba7fc14d4 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - みりぽんさん» みりぽん様！いつもご愛顧ありがとうこざいます（ ; ; ）ぜひまた短編集、作りたいと思いますのでそう言っていただけるとやる気につながります。これからもぜひよろしくお願いします（ ; ; ） (2021年9月6日 7時) (レス) id: 4ca019b306 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kae
| 作成日時：2021年8月20日 15時
