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部屋に入ってすぐにタバコに火をつけながらソファーにドンっと腰掛けた翔太さんは、入り口で立ち尽くす私に「…A、こっち来い」と首で隣を指す
ゆっくり近づいてから隣に姿勢良く腰を下ろし俯く
『翔太さん、』
泣きそうな気持ちを堪えて、床から目線は動かさないまま『ありがとう…ございました』となんとか伝えた
彼は「あいつらのこと、気にすんな、忘れろ」とタバコの煙をふかして一呼吸置いてから
「…俺の女って言ったの、…ごめんな」
と謝るから、私の思いを勘づいて突き放されたような気がして、ついに心が折れてしまった
『っ、すみませ、ん。私、帰ります』
翔太さんに涙を見られないように急いで立ち上がって掛けてあるスーツの上着を手に取ろうとすると、ガッ、と後ろから肩を掴まれて、ドン、と後ろの壁に背中を押しつけられる
「おい!まだ仕事終わってねーよ」
『っ、もう、辞めます』
「は?なんでそーなるんだよ」
"面倒くさい"と言わんばかりの鋭い目線にまた涙が溢れて、彼の目を見上げて抑えていた気持ちを遂にぶつけた
『翔太さん、のこと、っ、好きに、なったから』
すっ、と彼の目から投げかけられる視線がいつもの柔らかさに変わって、ふにゃり、と顔の力が緩んだのがわかった
「…別に、社内恋愛、禁止じゃねぇーよ」
『…え、…それって、』
まっすぐ見つめられたまま告げられる言葉に驚いて、あまりの嬉しさにまた涙が溢れると
「ふは、口、開いてんぞ」と優しく笑われてそのまま、ちゅ、と唇が触れた
体温が急上昇するのがわかって、頬に手を当てて止まっていた息を吐く
『え、え、え?』と混乱する私に、もといたソファーに向かって歩きながら「やっとだわ、鈍感恋愛初心者はこれだから」と小さい声で呟く
またドン、と腰を下ろして灰皿に置かれていたタバコを手に取ると、呆然としたままの私にニヤリと笑って最後の追い討ちをかけた
「安心しろ、こんな汚ねぇとこで抱かねぇよ」
「この仕事の後、ゆーっくりできんだからさ」
「帰ったら、覚えとけって言ったろ?」
"芋臭い"私の初めては、恐ろしいほど眩しい彼に奪われることが既に決まっているらしかった
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kae(プロフ) - あいさん» もうなんとお礼を伝えて良いのかわかりません…あい様のその気持ちで益々やる気が出てきました( ; ; )もう、そう言っていただけるだけで十分です!また嬉しいコメントをいただけるように頑張ります( ; ; )これからもぜひぶつけてください!笑 (2021年8月19日 6時) (レス) id: 03cd483279 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - amanonさん» amanon様…!リクエストありがとうございます( ; ; )長編が完結しましたら、ぜひ検討したいとおもいます!願望、教えてくださってとっても嬉しいです。また聞かせてください( ; ; ) (2021年8月19日 6時) (レス) id: 03cd483279 (このIDを非表示/違反報告)
あい - そして、自分の感情をぶつけ過ぎてごめんなさい。今度こそ!陰ながら応援させていただきます。大好きです! (2021年8月19日 5時) (レス) id: 84b5793c7c (このIDを非表示/違反報告)
あい - 後者の気持ちは隠しておきたかったけど、私もkaeさんの言葉が本当に嬉しかった…私は自分の小説があるわけではないので貴女に返せる物が無いです。いつも楽しい時間をありがとうございますね! (2021年8月19日 5時) (レス) id: 84b5793c7c (このIDを非表示/違反報告)
あい - コメント欄に「あまりコメントをいただいた事が無い」とkae様のコメントを見つけました。正直な話、こんな素晴らしい作品を沢山の方に読んでほしい!と思う反面、あぁ人気にならないで寂しい…と思ってもしまいます。完全に私の嫉妬ですね(笑) (2021年8月19日 5時) (レス) id: 84b5793c7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kae | 作成日時:2021年8月10日 13時