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転機が訪れたのは、大学を卒業した次の日だった。目を覚ますと、いつもは必ず私のそばで微笑んでいるはずの涼太さんと人形の姿がなかった。寝室を出ると、大広間からの物音。恐る恐る扉を開くと、暖炉の前で項垂れる彼の背中が見えた。
『………涼太さん？』
「っ、……あぁ、Aか。おはよう……ごめんね、そばから離れてしまって」
『いえ………何かあったんですか？』
「………うん、ちょっとね」
慌ててこちらに振り向いたその頬に、涙がすーっと流れていて。初めての事に私の心も騒ついた。弱っている涼太さんが愛おしく思えて、そっと彼の横に腰を下ろして、横からぎゅう、と抱きしめる。
「………Aちゃんが連れていかれたんだ」
『え、！』
「今朝来たお祖父様たちの代理の人間に無理やり奪われた。Aちゃんの結婚が決まったって。もう二度と会えないって………そんな、そんなの酷すぎるじゃないか！！」
大粒の涙を流しながら拳を膝に打ちつけた涼太さんは、椅子からがっくり、と床に崩れ落ちた。………そうだ、この時が来たんだ。当初の条件通り、彼から人形を離す計画が施行された。老夫婦の目論見は最初からこれだった。将来的に涼太さんが世間から奇妙な視線を浴びないように、そして何より宮舘家の繁栄の為に。大学卒業までに彼に愛情を感じなければ、私がここを去り、計画は頓挫するはずだった。だけれど……
「っ、！………A、……」
『私に何かできることがあれば言ってください』
私は彼の涙でぐちゃぐちゃの頬を両手で包み込んで、ゆっくり唇を重ねた。そう、私は愛してしまった。歪んだ愛情で人形と同じように施されてもなお、いやそれこそが私を変えてしまった。いつしか……"A"という存在が私だけになればいいと……そう考えるようになっていたのだ。
「っ、A………俺はもう、どうしたら……」
『今は何も考えないで？……私だけを、見てください』
頭を優しく撫でてあげて、涙が込み上げる彼の悲しみを押し殺すように、また唇を押し付けた。それに堰を切ったように彼は私を床に勢いよく押し倒して、侵蝕するように深く長いキスをした。
『んん、……はぁ…りょ、うた……さん、』
「……A、……愛してるよ」
『ん、……私も、………愛してます』
「君だけは………俺を置いていかないで……」
震える声で懇願する彼に何度でも頷いた。
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kae(プロフ) - meeeeenさん» meeeeen様、いつも優しいお言葉をかけてくださってありがとうございます😢架空とはいえ、ありそうだなぁとお話の世界に入っていただけて嬉しいです🙏こちらこそ読んでくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いします😭 (2023年4月4日 18時) (
レス) @page49 id: 2742f5c4f0 (このIDを非表示/違反報告)
meeeeen(プロフ) - 最後まで楽しく拝見させていただきました。勿論、彼らは素敵な人でそんなことはしないであろう…でも、想像できます。素敵なお話ありがとうございました！！ (2023年4月4日 11時) (レス) @page50 id: f8e174bf81 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - ゆきさん» ゆき様〜！いつも温かいコメありがとうございます😭あまり反応が無くて悲しくなってたんですが、一気に全部吹き飛びました😂これからも頑張れます…！ほんとにほんとに凄く嬉しいです！！これからも宜しくお願いします♡ (2023年4月2日 10時) (レス) id: 2742f5c4f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - kae様、いつも刺さりまくるお話ありがとうございます！ ダークなスノさん最高でした🥹 またお話たのしみにしておりすます！ (2023年4月2日 8時) (レス) @page50 id: 6c8365d1f8 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - まーたんさん» まーたん様、コメありがとうございます😭のんびり更新とはなりますが今後ともお付き合いください💦 (2023年1月4日 15時) (レス) id: 0d3898dd38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kae
| 作成日時：2022年12月5日 0時
