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あの日からラウール君との連絡が途絶えた。確かに嫌な予感はしていたけれど、それを拭えるほど私は気の利いた言葉をかけられなかった。彼には私に打ち明けられない何か大きな闇を感じていたから。
〈あの、すみません。こちらの店主の方ですか?〉
『はい!何か御用でしょうか?』
年配のスーツを綺麗に着こなす男性。私に向けられた笑顔はゆっくり凍ってき、真顔になる。急激な雰囲気の変わりように困惑の表情を浮かべると、1枚の紙を差し出される。
──── 土地売買契約
〈こちらの土地を買い上げたいのです。新規のホテル建設計画がありまして。レジャー施設がこちら一帯に設営されます。ご存じですよね?2年前から何度もうちのものが説得にお伺いしていると思います……最近になってやっと周辺のお店や民家には既に了承を得られるようになりました。それがどういうことか………お分かりですよね?〉
そう。知っていた。祖母は店を守るために反対派の近隣住民と結託して、抗議活動をしていたことも。しかし半年前、亡くなった際に私にこの店を託して亡くなった。だから私は必死に買収側の行動を無視し続けてきた。
『なるほど………そう言うことですか』
「……?……何が、でしょうか?」
目の前の男性は思い当たることがないと言いたげに、にこり、と口元を動かした。その笑顔に見覚えがあった。いや、正確には似ている彼を思い出した。
『回りくどいことをしてくるもんですね』
「………察しがいいお嬢さんだ。………顔だけはいい息子の使い所だと思ったんですけどねぇ」
『………なんですって?』
「貴女を手なづけたまではよかったのに。そこから上手くやればいいものを………はぁ。最後まで使えない子供ですよ」
『………酷い親ですね』
「どうでしょう?こちらも被害者みたいなもんですからねぇ。………親も子供を選べませんから」
こんな奴に虐げられてきたラウール君を今すぐに抱きしめてあげたいと思った。彼があの時決意したように呟いた"嫌だ"という叫びは、私を手玉に取ってこの店を開け渡すように命じられたことに対する、反抗だったんだ。
『ラウール君を………どうするつもりですか?』
「そうですねぇ。作戦を履行できなかった罰は受けてもらいますかね」
どうしてそんな卑劣な言葉をへらへらと気味の悪い笑顔で話せるのか、不思議でならなかった。
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kae(プロフ) - meeeeenさん» meeeeen様、いつも優しいお言葉をかけてくださってありがとうございます😢架空とはいえ、ありそうだなぁとお話の世界に入っていただけて嬉しいです🙏こちらこそ読んでくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いします😭 (2023年4月4日 18時) (レス) @page49 id: 2742f5c4f0 (このIDを非表示/違反報告)
meeeeen(プロフ) - 最後まで楽しく拝見させていただきました。勿論、彼らは素敵な人でそんなことはしないであろう…でも、想像できます。素敵なお話ありがとうございました!! (2023年4月4日 11時) (レス) @page50 id: f8e174bf81 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - ゆきさん» ゆき様〜!いつも温かいコメありがとうございます😭あまり反応が無くて悲しくなってたんですが、一気に全部吹き飛びました😂これからも頑張れます…!ほんとにほんとに凄く嬉しいです!!これからも宜しくお願いします♡ (2023年4月2日 10時) (レス) id: 2742f5c4f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - kae様、いつも刺さりまくるお話ありがとうございます! ダークなスノさん最高でした🥹 またお話たのしみにしておりすます! (2023年4月2日 8時) (レス) @page50 id: 6c8365d1f8 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - まーたんさん» まーたん様、コメありがとうございます😭のんびり更新とはなりますが今後ともお付き合いください💦 (2023年1月4日 15時) (レス) id: 0d3898dd38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kae | 作成日時:2022年12月5日 0時