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せめて顔をみて話したい。そう思ってそっと彼のかぶっている布団を捲れば、その中で小さく折り畳むようにこちらに向かって疼くまる姿が見えて、彷徨っていた目線がこちらに向けられる。涙が浮かんでいて、目も鼻も真っ赤。むーっと拗ねるような口元。いつも元気な向井がしゅん、と落ち込む犬のように見えて可愛いなんて思ってしまった
「っ、ぐす、…Aちゃん…」
『お願い、康二。私、貴方の力になりたいの。いつも甘えさせてくれてありがとう。だから今は私に甘えてくれないかしら?』
優しく問いかけて、彼の綺麗な手に指を重ねて包むように握る。不安そうな彼の瞳が少し揺れた
「でも…」
『ほら、おいで?』
両腕を大きく広げて、彼に向けて精一杯の笑顔を作ってみる。どうか少しでも私に頼ってほしい
「っ、わーあああん!」
『うわ、!うふふ、』
堰を切ったように泣き始めると同時に飛びつくように抱きしめられて思わず身体がのけぞった。それをなんとか抱き止めて、ぎゅ、と受け入れると、すりすりと首元に向井が顔を埋める
「Aお嬢様の匂い…好きやなぁ」
『ふふ、康二はいつもそう言ってくれるわよね』
「だって…好きな人の匂いはやっぱり特別やもん」
『ありがとう。私も康二の匂い、好きよ?』
「〜〜っ、それずるいわ…」
照れたよな吐息を漏らした彼が可愛くて、ふふ、と笑って見せるとつられて「もー笑わんといてやぁ」なんて笑いながら返事があった。いつもの向井の雰囲気が戻ってきて少し安心すると、意を決したように溜息をひとつついて向井が話出す
「…スランプ、やねん」
『…すらんぷ?』
「うん。…なんや、昨日の夜から……味が、分からへん」
『っ、え!』
料理人の彼にとってそれは致命的な事…それは中々打ち明けられないよね
「ふっかさんに相談したら少し休んだ方がいいっていうねん。多分働きすぎやって。でもさ…俺以外の人にAお嬢様の食事を作ってもらうーいうのは…いやや」
『康二…』
「だってな?もし代わりの人でもなんも問題ないんやったら、俺は必要ないやんって思ってまう。Aちゃんに美味しいもん食べてほしくて頑張ってきたのに…」
彼はまたしゅん、と落ち込んで私の肩に頭をもたげた。「俺のこと…捨てんといて…?」と消え入りそうな声が耳に届いて、すぐに返す言葉が見つからなくて彼の背中に手を回すことしかできなかった
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kae(プロフ) - ひよこごはん(赤月 アズ)さん» ひよこごはん様〜!再度のコメントありがとうございます🫶🏻う、嬉しい…力強いメッセージでエネルギー分けていただきました!!のんびりな私を今後ともよろしくお願いします✨ (2022年11月3日 7時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
ひよこごはん(赤月 アズ)(プロフ) - 2章完結おめでとうございます!!!作者様のペースで頑張ってください!完結までついていきます!!!! (2022年11月3日 1時) (レス) @page50 id: 339e8970fe (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - のんさん» のん様、日頃より優しいお言葉をありがとうございます😭ほんっっとうに励みになります……これからもお付き合いいただければ幸いです😭 (2022年11月3日 0時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
のん - お久しぶりです!のんです。2章完結おめでとうございます🎉これからも応援してますのでゆっくりで大丈夫ですので執筆活動頑張ってください😊 (2022年11月2日 23時) (レス) @page50 id: 826efce59b (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - たぬさん» たぬ様、嬉しいコメントありがとうございます!自己満の配役も喜んでいただけて感激です😢お気遣いまでいただいて優しさに甘えます。笑 なかなかの亀更新ですがお付き合いいただけると幸いです♡ (2022年9月30日 20時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kae | 作成日時:2022年6月15日 23時