◊*゚79 ページ30
.
彼がもじもじと照れながら話す姿が意外だった。これまではいつも背筋が伸びた王子様のような雰囲気だったのに、急に柔和した笑顔とあどけなさに拍子抜け……いや、親近感がぐっと感じられた
『ふふ、緊張なさってたんですね。そんな風には見えなかったので』
「なんとか誤魔化していました……なにせAお嬢様と直接見えてお話しできるなんて、いち市民にしてみれば夢のまた夢ですから……」
は!と気がついた彼は「あ、すみません!どうぞ、こちらに」と私の手をそっととって縁側にある椅子に私を促した
「ここに座ってお茶を飲むと、心が安らぐんです。これをぜひお見せしたくて」
『そうでしたか。本当にとっても素晴らしい景観ですね。心が安らぎます』
「よかった……」
ほっとした様子を見せた彼は、後ろで待機していた女中に合図を出してお茶を運ばせた
『あの、………宮舘先生は?』
「……ええ、実は今その……ま、まだ着替えが終わっておられないようでして……」
『………そうですか』
「……気になられます、……よ…ね?」
心配そうに見上げる彼の瞳には、私に対して申し訳ないという気持ちが浮かんでいるように見えた。だとすれば、あの自信に満ちた宮舘の表情からすると、あえて京本さんの仕掛けた罠にわざと嵌って……今それと戦っているのかもしれない。だから姿を見せられないのかも。彼の身に何か……いや、でも。
『ええ……でも………構いません。信じてますので』
「え?」
『彼は誠実な人間ですし、ここから私を置いて急に逃げ出すとは思えません。それに京本さんが……彼に危害を加えるとは思えませんので』
真っ直ぐ目を見て伝えると、彼の表情が苦渋に歪む
「先日、A様のお屋敷で大きな事件があったというのに……お嬢様も周りの人間も大変怖い思いをされたと噂で聞いています。なのにどうして……まだ2回しかお会いしていないのに……僕のことまで、信頼してくださるんですか?」
『私というより……宮舘先生が貴方を、です。ここに来て着替えという名目で離されても、決して案ずる様子がなかった。私を守ると約束をしてくれた彼が、です。それは久しぶりにお会いした京本さんとお話しして、危惧する点がなかったからだと思います』
「………お二人は言葉を交わさずにでも、そこまで通じ合ってるんですね」
『京本さんもそうなのではないですか?…それゆえに距離を取らざるを得ない』
.
872人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kae(プロフ) - ひよこごはん(赤月 アズ)さん» ひよこごはん様〜!再度のコメントありがとうございます🫶🏻う、嬉しい…力強いメッセージでエネルギー分けていただきました!!のんびりな私を今後ともよろしくお願いします✨ (2022年11月3日 7時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
ひよこごはん(赤月 アズ)(プロフ) - 2章完結おめでとうございます!!!作者様のペースで頑張ってください!完結までついていきます!!!! (2022年11月3日 1時) (レス) @page50 id: 339e8970fe (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - のんさん» のん様、日頃より優しいお言葉をありがとうございます😭ほんっっとうに励みになります……これからもお付き合いいただければ幸いです😭 (2022年11月3日 0時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
のん - お久しぶりです!のんです。2章完結おめでとうございます🎉これからも応援してますのでゆっくりで大丈夫ですので執筆活動頑張ってください😊 (2022年11月2日 23時) (レス) @page50 id: 826efce59b (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - たぬさん» たぬ様、嬉しいコメントありがとうございます!自己満の配役も喜んでいただけて感激です😢お気遣いまでいただいて優しさに甘えます。笑 なかなかの亀更新ですがお付き合いいただけると幸いです♡ (2022年9月30日 20時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:kae | 作成日時:2022年6月15日 23時