◊*゚59 Green ページ10
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屋敷に届く書類や手紙の整理はもちろん支配人である俺の仕事で、今日もそれと対峙していた。Aお嬢様は自分のためにお金をかけたり、贅沢をすることは好まない。だから世の中の富裕層の家と比べれば遥かに請求書の数とそれを管理するためのファイルは少ない。その事が特徴であり俺の誇りでもある。書類に関してはラウールの父親から現状の説明や相談事が届いたりするくらいで。だからこそ一番割合が多いのが圧倒的にお嬢様へのファンレターである。彼女がこの地域一体にもたらしている経済、住民に対する気遣いやサービスは幅広く、それを感謝するものばかり。屋敷に住んで働いている人間はそんな大勢の中の選ばれたものだけ。それを束ねる人間に俺を選んでくれた…そんなところも彼女を尊敬しているし…もちろん愛している。今日も彼女宛の便箋をしっかり全て確認してファイリングしてからお嬢様にお渡しする…ん?これは…差出人の名前が無いな。珍しい。お嬢様は差出した市民の顔が浮かぶからと名前を書くことを推奨しているのに…。不思議に思いながらスタンプ型のシールを剥がして、便箋を引き抜いたその時。
「っ、!!……これは、」
小さく鋭い痛みが身体を貫く。指紋を残さない為にしていた白い手袋の指先から赤い血が滲んで布を染めていく。
「くそ、油断してた…っく、ただの針じゃ…無さそうだな、っ、」
段々と息が苦しくなるのが手に取るようにわかる。針になにか薬が仕込まれていたのだろう。誰が助けを呼ばなくては…くそ、力が入らない。椅子から崩れ落ちるように身体が倒れる。痺れてくる手が震えて、前に進めそうに無い。お嬢様を狙った犯行か?ならば尚更この先彼女が危ないのに、俺は一体何をしているんだ…こんな所で倒れている場合では…
「誰か、頼む…くっ、」
必死に出口のドアに這いつくばりながら進もうとしていたところに誰かの走る足音が聞こえてくる
「阿部ちゃん大変や!!って、……あれ?……っ!!阿部ちゃん!!大丈夫か!!何があったん!?」
「康二…助かった、…っ、ふっかを、あと…目黒に、…お嬢様を…たの、む、………と、」
「なぁ阿部ちゃん!しっかりしてや!」
康二の叫ぶような呼びかけも遠のく意識でどんどん聞こえなくなった。ああ、もしかしらもうこのまま俺は…?
『っ、亮平!!…お願い、っ、目を覚まして…』
愛するAが俺を呼んでいる。泣きながら俺の手を大切そうに握りしめて。その後また意識が遠のいた
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kae(プロフ) - ひよこごはん(赤月 アズ)さん» ひよこごはん様〜!再度のコメントありがとうございます🫶🏻う、嬉しい…力強いメッセージでエネルギー分けていただきました!!のんびりな私を今後ともよろしくお願いします✨ (2022年11月3日 7時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
ひよこごはん(赤月 アズ)(プロフ) - 2章完結おめでとうございます!!!作者様のペースで頑張ってください!完結までついていきます!!!! (2022年11月3日 1時) (レス) @page50 id: 339e8970fe (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - のんさん» のん様、日頃より優しいお言葉をありがとうございます😭ほんっっとうに励みになります……これからもお付き合いいただければ幸いです😭 (2022年11月3日 0時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
のん - お久しぶりです!のんです。2章完結おめでとうございます🎉これからも応援してますのでゆっくりで大丈夫ですので執筆活動頑張ってください😊 (2022年11月2日 23時) (レス) @page50 id: 826efce59b (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - たぬさん» たぬ様、嬉しいコメントありがとうございます!自己満の配役も喜んでいただけて感激です😢お気遣いまでいただいて優しさに甘えます。笑 なかなかの亀更新ですがお付き合いいただけると幸いです♡ (2022年9月30日 20時) (レス) id: 3dfc085b7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kae | 作成日時:2022年6月15日 23時