レイニー・シャイニー・リリー【K.N】 (ページ9)

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「…え？…えっと……、」

「ごめんね、急にそんなこと言われてもって…感じだよね。……潤のお母さん、病気でね。ずっと、潤が看病してたの」

「…っ、いつから…？いつから、潤のお母様は…、」

何度か会っていた。

高校を卒業してから付き合いだした私たちは、親元を離れて東京の大学に進学した。

だから、2、3回くらいではあるけど、潤のご実家に遊びに行ったことがある。

潤のお父様はすでに他界していると聞いていた。

『潤は一人息子だから…、頼りないところもあるかもしれないけど、よろしくね』

潤のお母様にそう言われたことを、よく覚えている。

「…潤が、Aちゃんに別れを切り出す数日前、急に倒れて。…それからずっと、病院で寝たきりの生活だった」

「え……？…そんなこと、私には何も…っ」

「言えなかったの。……迷惑かけたくないから、って」

…迷惑なんて、そんなこと、思うはずない。

言ってくれれば、手伝えることは何だってした。

…そう口から言葉を出す前に、咲ちゃんは私に現実を突きつけた。

「潤は、…潤のお母さんにとってたった一人の家族なの。潤のお母さんを看病できるのは潤だけ。寝たきりの人を介護するなんて、想像するより遥かに大変だよ」

「…っ、」

「大切な人を自分のために拘束させるなんてこと、…潤には出来なかった。関係を続けていても、看病につきっきりになる毎日の中、Aちゃんと過ごす時間だって確実になくなってしまう。だから、……潤は決心した」

「…そんなこと…っ、勝手に…」

「勝手だって思うかもしれないけど…、それでも潤は、お母さんとAちゃん、２人の幸せを考えて考えて、…その上で判断したんだと思うよ」

…分かるよ。

分かるけど。

…どうして咲ちゃんには言えて、私には言えなかったの…？

別れるにしても、…お母様のこと、私にも話してくれたって…っ、

「ごめんね。私も、このこと知ったの、Aちゃんと別れた後だったから。…何もできなかった」

「…え？」

「Aちゃんと別れたって聞いて…、何でかって問いつめたら…、そう言ってたの」

咲ちゃんは、涙を目にいっぱい溜めていた。