レイニー・シャイニー・リリー【K.N】 (ページ5)

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「久しぶり。…元気にしてた？」

あの頃…大好きで仕方なかったあの頃。

…付き合っていたあの頃の潤より少し痩せた気がする。

それでも、笑いかけるその優しい顔は何も変わっていない。

「…うん。元気だったよ。」

「そっか。……彼氏？」

手を繋ぐ隣の二宮さんをちらりと見て問うてくる。

うん、…そう言おうと私が口を開くより前に、二宮さんの声が聞こえた。

「どうも。…俺がAちゃんの彼氏かどうかなんて、コレ見れば一目瞭然なんじゃないの？」

そう言って繋がれた手に視線を移す二宮さん。

潤は、それを見てふっ、と微笑んだ。

「…幸せそうでよかった。偶然でも会えてよかったよ。じゃあね。」

その体を翻して去って行く潤。

「…あっ、」

その姿を、私は何故か追いかけようとしていた。

足を踏み出そうとする私を止まらせたのは、繋がれたその手。

ただ繋ぐだけじゃない、…二宮さんの、男の人の力を、その手に感じた。

「…ごめんなさい。」

二宮さんがいるのに、何で追いかけようとなんてしてしまったのだろう。

こんなにも幸せな時間を過ごさせてくれているのに。

「行きましょ？」

何も言わない二宮さん。

怒ってるのかもしれない。

「…誰？あの人。」

不意に聞こえたその声に、我に帰る。

…言わなきゃ。元カレだって。

それなのに、捨てられてしまったあの雨の日の記憶が蘇って口が開かない。

「…付き合ってた人？」

そんな私の心の内を読んだように問いかける二宮さん。

何も言えずに、ただ頷いて肯定する。

「そっか。……かっこいい人だね。」

そう言って笑ってくれる二宮さんは、どこまでも優しくて心が広い人。

私は、二宮さんが好き。

それなのに、潤のあの背中を追おうとしてしまった。

…捨てられてしまったけれど。

それでも付き合っていたあの頃、確かに潤と過ごす時間は楽しかった。

幸せだった。

私は、…潤のことが大好きだった。

「行こっか。」

そう言って手を引く二宮さんの横顔を見ながら、私は今手にある幸せを確かめる。

こんなにも幸せなのに。

…こんなにも悲しい思いをしているのは何故だろう。

私は、この時はまだ知らなかった。

私に背を向け去って行く潤が、泣いていたということを。