51 ページ3
＊松本side
「どうぞ、あがって。」
迎えてくれた翔さんの家の玄関をくぐり、俺と雅紀はリビングのソファに座る。
「雅紀、…ちゃんと食べてる？」
翔さんが雅紀にそう声をかけると、雅紀はまたさっきの言葉を繰り返す。
「大丈夫だよ、翔ちゃん。」
「…そっか。」
翔さんは笑顔でそう返した。
大丈夫な訳がない。
それでも、俺たちは雅紀に怒ったり慰めたりなんかしない。
…俺たちに出来ることは限られていると、分かっているから。
それは、雅紀と離れないこと。
…たったそれだけなのだ。
救ってやりたいけど、助けてやりたいけど、俺たちはただ雅紀のそばで生きていくことしかできない。
だからこそ、精一杯強がって笑う。
雅紀のために。
「雅紀、今日はね、雅紀に相談があって呼んだんだ。」
翔さんは、精一杯の強がりをその顔に写して言葉を紡いだ。
「…俺？」
「そう。雅紀。…雅紀は、……カズのこと、知りたいと思う？」
カズ、という名前にその体を小さく揺らした雅紀。
「どういう、こと？…翔ちゃんは、何か知ってるの？…カズのこと。」
「いや。…前に、俺の親父と馴染みの刑事にカズとサトウショウノっていう男の調査を依頼したって話…しただろ？」
「…うん。確かその２人の名前は偽名だったって。」
取り乱す様子もなく、静かに翔さんの話を聞く雅紀。
「うん。…勝手に調査なんて…ごめんね？でも、…俺はやっぱり雅紀のことが大事だし、…心配だったんだ。…本当にごめん。」
謝る翔さんに、雅紀はふるふると首を横に振った。
「ううん。…翔ちゃんが俺のことをいつも想ってくれてるって、分かってる。……心配かけてるよね、…ごめんね。」
雅紀は、少し間を空けて言葉を続けた。
「翔ちゃんのお父さんは…、調査してその２人のこと何か分かったの？」
「いや、真相にはまだ辿り着けてないらしい。…でも、調査の経過報告は俺にじゃなくて、するなら雅紀に一番に話すべきだって、親父はそう言っているんだ。」
「俺に…？」
「うん。…雅紀、あのな、これは雅紀の心によく問いかけて、決めて欲しいんだ。…雅紀にとって、もしかしたら辛くて苦しくて悲しい話になるかもしれない。」
翔さんは、一呼吸して、静かに雅紀に告げた。
「…雅紀のお父さんのことも…親父は何か知っているみたいなんだ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 123人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
壊れた消しゴム - 一瞬で読み終えました。この後カズは40年たって相葉さんと会えてるのかがわからんがいい話でした！これからも出筆ガンバです！ (2017年7月3日 1時) (
レス) id: 376699f6a2 (このIDを非表示/違反報告)
aim(プロフ) - 雪瀬さん» 雪瀬さま、コメントをありがとうございました。この作品を読んでいただけて嬉しいです。本日完結しましたが、雪瀬さんにとって納得のいくラストになっていたら嬉しいです。 (2017年6月12日 9時) (レス) id: ba86f15203 (このIDを非表示/違反報告)
雪瀬 - 一気読みさせていただきました。とても素敵なストーリーで感動しました。これからの５人がどうなるのか・・・続きを心待ちにしています。 (2017年6月2日 20時) (レス) id: d581ee13dd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aim | 作成日時：2017年5月28日 20時
