月夜に、恋。＊２ (ページ9)

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「……あの、二宮、さん」

「ん……？」

名前を呼ばれてそちらを見ると、その視線は少しずれていても、その瞳は俺を見つめていて。

「今日は、……ごめんなさい」

「何で謝るのよ」

「迷惑、……かけた」

「そんなことないよ？……とにかく無事でよかったよ」

「……うん、」

小さく頷いて、今度はその瞳をくるくると忙しなく動かす相葉さん。

「相葉さん？」

少し心配になって声をかけると、相葉さんは小さく話し始めた。

「…今まで、俺のことを気にかけてくれたり、する人はいたし。……友達もそれなりにたくさんいて。大切な、……人もたくさんいるの」

突然、なにかを話し始める相葉さんに少し戸惑いつつも、俺は静かにその話に耳を傾け、一語一句、相葉さんの想いを逃さないように集中した。

「でもね、……本気で怒ったり、……本気で泣いたり。……なにかを犠牲にしてまで俺を守ろうとしてくれる人は、………翔ちゃんだけだった」

無茶をする相葉さんを怒ったり、そんな相葉さんを想って人知れず涙を流したり。

翔くんは、いつだって相葉さんの味方でいようとしていて、いつだって相葉さんを守っていた。

「……申し訳ないなって、思ったりもするけど。やっぱり、嬉しいし、……心強いって、思うんだ」

そこまで言うと、相葉さんは静かに顔を上げて。

もう一度、こちらを見る。

「でも。……好きだって、………言ってくれたのは。……二宮さんが、初めてだった」

「え…？」

「こんな俺を、…一人の人間として、……好きだって言ってくれる人がいることが。……こんなに嬉しくて力になるんだって、……わかった」

その大きくて温かい手が、少しずつ動いて。

俺の手、…腕、……肩、………顎。

少しずつ、俺の身体を伝っていく。

そして、俺の頬を包み込むと。

「……っ、」

その親指が、俺の唇を確かめるように撫でて。

……優しくて温かい。

あの時と同じ、唇の感触が。

俺のくちびるを、静かに奪っていった。