月夜に、恋。＊２ (ページ21)

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64*特別な肩書きページ21

.N side

「お兄さん、今日のおすすめのお花は？」

「ふふ、…何してんの？ニノ」

見慣れたお店の中。

花に囲まれた愛しい人は、おかしそうに笑う。

「やっぱり声でわかっちゃうんだ？ビックリさせようと思ったのになー」

「バレバレだよ～。ニノ、お芝居やってるんだから。驚かせたいならもうちょっと役作りしないとね」

「お、言うねー相葉さん」

「くふふ」

今日は夕方には仕事が終わって。

一回家に帰ってから、こうして相葉さんに会いに歩いてきた。

我ながら、出不精な俺がよくこんなにも変わったものだと思う。

でも、今まで大好きだったゲームの時間より、相葉さんといる時間の方が圧倒的に楽しい。

何より、仕事の疲れも全てが吹き飛ぶくらいに癒しになる。

この笑顔を見るたびに、心が温まる。

「今日もお花、何か持ってく？」

「うん。何がいいかな。そろそろリビングにある花変えようと思ってるんだけど」

「んー、そうだなぁ」

実は、花を選ぶときの相葉さんの横顔を見るのが好きで。

元々、花とか緑とかには疎かった俺だけど、相葉さんと出会ってから大分花の名前を覚えた。

この花が可愛いな、とか、この花の香り好きだな、とか。自分の好みも少しずつ見つけてきて、あの頃に比べたら、正直自分で選ぶことだって今ならできると思う。

でも、いつもこうして相葉さんに選んでもらっている理由はただ一つ。

花を選ぶ、楽しそうなその横顔を見ていたいから。

こんなこと、絶対に言わないけど。

綺麗に通った鼻筋に、ぷっくりとした唇。

長い睫毛にサラサラと揺れる髪。

その全てが俺を魅了して。

そして今日もこの人が好きだと、自覚する。

「はい、こんな感じでどう？」

「うん。いい感じ。ありがと」

色とりどりの小さな花束を手に笑うその顔は、できるなら誰にも見せたくないと思う。

まぁ、接客のお仕事だからそれは無理なんだけど。