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.N side
電話越しに向こうの空気が震える。
「……相葉さん？」
何も返答がないことに戸惑って、その名前を呼ぶ。
「……にの、みやさん、……」
「なに、……どうしたの？」
小さくて頼りない声が聞こえる。
「……ごめん、なさい」
「え……？」
まさか、今俺はフラれているのか？
急激に体温が奪われていく気がした。
「もしかして、…この間の、返事？……それなら気にしてない……」
「助けて……、」
か細い声が、鼓膜を震わせた。
「え…？」
「たすけて、……ください」
震えるような声。
「……っ、どうしたの？………今どこ？」
「…わかんない、」
泣くのを我慢しているような、そんな声。
なにか良くない状況が彼を襲っているのだと、そう思った。
「相葉さん？……落ち着いて。なにがあったか、教えてもらえる？」
なるべく、ゆっくりと。
落ち着かせるような口調で語りかけると、細々と詰まりながらも話してくれた。
買い出しをしようと街中に出たが、その途中で人とぶつかってしまったらしい。
そのぶつかってしまった人は、相葉さんにすごい剣幕で怒りをぶつけてきた。その場はなんとか収まったものの、怖くなってしまい。
混乱した頭でそのまま歩いていたら、自分がどこにいるのかもわからなくなってしまったのだと。
「…翔くんは？電話してみた？」
「うん、……でも、…繋がらない。……今日、出張だって、…言ってた気がする」
外を見ると、雲行きが怪しくなってきている。
そろそろ雨も降りそうだ。
「外にいるんだよね？」
「うん、……ごめんなさい」
今すぐに動きたいところだけど、俺はこれから仕事がある。…仕事を放っていくわけにもいかない。
でも。
……相葉さんをこのまま放ってもおけない。
俺にとって何が大事？
…仕事？
もちろん、仕事も大事だ。
だけど。
……大切な人を失うことの方が、…よっぽど辛い。
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作者名：aim | 作成日時：2019年6月16日 15時
