【Fischer's】水魚之交 III【短編集】

ンダホ：辛い事がある２ ページ9

俺は悩みが無いのが悩みみたいな物だから、Aが色んな事で悩んでいる姿を見ると、毎度代わってあげられたらいいのにと胸が苦しくなる。Aは心配性で些細な事で心に傷を負ってしまうくらい繊細なのだ。

「Aスマブラしない？」
『……。』
「…A、A？」
『え? あ、あぁ…ゲーム。うん、いいよ』

今日もそれは例外ではなかった。彼女はまた何かに思い悩んでいて、気分転換にゲームを誘っても何処か上の空で楽しめておらず、度々溜息が漏れていた。Aには悪いが俺は突然ゲームの電源を落とすとコントローラーを置かせ代わりに俺が彼女の手を握る。彼女はきょとんとした顔で俺を見やった。

『ダホくん、どうしたの?』
「あのねA、辛いなら俺に全部ぶつけていいんだよ」
『え？』
「Aが辛そうな顔してるの見てるのは辛いよ。俺で良ければ全部聞くから、相談にも乗るから、話してくれないかな…?」

自分では隠していたつもりでもそんな感情がバレていた事にAは少し驚いている。俺が今一度強く手を握ると、Aは観念したように深呼吸をして俺に悩みの種を打ち明けてくれた。俺はただ相槌を打つだけで話を遮る事無く聞き続け、彼女の苦しみが俺が聞く事で解消される事を願う。

『ごめんね、こんな話ダホくんには関係ないのに』

ある程度を話し終えたAは心底申し訳そうで、それが逆に悲しくなってこっちが涙目になり必死に首を横に振った。

「ううんううん、関係あるとかないとかそんな事じゃないよ。俺はAが辛いなら助けてあげたいんだから、俺がしたくてね、やってるんだから。」
『…うん。ありがとう、凄く楽になったよ』
「本当？もう悲しくない？辛くない？」
『うん、本当に。ダホくんが助けてくれたからね』

Aは俺の手を握り返すと微笑んで、自分からゲームをしようと勧めてきた。
俺はAの辛い気持ちを肩代わりする事は出来ないけど、それを共有して一緒に泣く事が出来るんだよ。俺がずっと、助けてあげるからね。そんな気持ちを胸に秘めたまま、俺達はまたゲームを再開した。

END

辛い時・ンダホ：悩みを真剣に聞いてくれる

　

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