シルク:机上の恋想 ページ15
最近好きな奴が出来た。花の高校生だし青春だしそれは別に特別な事ではないのだろうけど、でも俺にとってはこれまでの人生の中で結構真面目に恋してしまった相手だ。しかも1度も話した事が無い。そんな人とたまたま日直が被ると言う最高に好機な事が起こり、喜んだ、の、だが。
「じゃあなーシルク」
「先帰ってるよー」
「お、おう…」
何やってんだ俺、何やってんだ俺!もう1度言うぞ、何やってんだ俺!気付いたらもう放課後だし、日直の仕事がある時間俺寝ちまってたし、その所為であの子は1人で仕事してたらしいし!昨夜寝ずに漫画読んでいたのがこんな所に響くとは誰も思わないだろう。
誰もいない教室で、俺とあの子だけの二人きり。もうきっとこんなチャンスは来ない。せめて、下の名前で呼んでみたい、と言うより話しかけなきゃ始まらねえ。
「…あぁの、俺なんかする事ある?」
『え…っと…じゃあ、このしおりホチキスで止めてくれると、嬉しいです。』
可愛い!!!じゃない顔に出すな俺、平常心でデキる男でコミュ力が高い奴になりきるんだ。
「あはは、何で敬語なの?同級生じゃん、普通でいいよ」
『…わ、分かった。』
「あ、そう言えば話すの初めて、だよね?名前分かる?」
『うん、絹張…くん、だよね。』
「お、良かった!君は…」
彼女が俺を知ってくれている事に喜ぶのも束の間、この流れはさり気なく下の名前を呼ぶチャンスだ。それなのに、いざ声を出そうとすると緊張で喉が締まってしまう。このままでは俺が名前を覚えてない失礼な奴だと思われてしまうのに
『A』
「へ?」
『Aって、言います。話した事ないんじゃ、分からないよね…』
他の女子と笑い合っている所しか見た事なかった俺からすれば、今とても悲しそうにしているA、いやAを見ているのが辛かった。俺が彼女をこんな顔にさせてしまったのかと思うと、いても立ってもいられなくなって。
「そ、そんな事ない!」
『…え?』
「Aは知らねえと思うけど、俺はずっとAの事知ってたし見てたし、すげー可愛いと思ってたから!……ぁ」
立ち上がった俺と、その俺を座ったままのAが顔を真っ赤にして見上げている。微風に揺れるカーテンを横目に、ああ。俺の青春終わったな、そう思った時。
『あ、ありがとう…凄く嬉しい』
「嬉しい、って」
『私も、絹張くんの事、見てた…かも。』
あれ、これってもしかして俺、まだ青春真っ只中なんじゃねえの?
END
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ポリフェノール(プロフ) - coyumaさん» 初めまして、コメントくださり誠にありがとうございます! 最上級の褒め言葉を頂けて大変嬉しいです、ありがとうございます。 続編は、話のネタがある程度の数が固まり次第また再開しようかと思っております。なのでその際はまたお話を覗いてくだされば幸いです! (2019年7月5日 20時) (レス) id: 77269a22b5 (このIDを非表示/違反報告)
coyuma(プロフ) - 私もシリーズの最初からずっと楽しく読ませてもらっていました。ポリフェノールさんの文章は情景が思い浮かべることが出来て、あたかも自分のことのようにドキドキできます。続編も書いてほしいです。時間があるときでいいですので! (2019年7月5日 20時) (レス) id: 96592c7e36 (このIDを非表示/違反報告)
ポリフェノール(プロフ) - 美夢さん» 初めまして、わざわざコメントしてくださり誠にありがとうございます! 最初から見て頂いているなんてとても嬉しいです、ありがとうございます。 続編は、話のネタがある程度と溜まってきたらまた始めようかと思っておりますので、またご贔屓にしてくだされば幸いです! (2019年6月28日 0時) (レス) id: 77269a22b5 (このIDを非表示/違反報告)
美夢(プロフ) - 水魚之交1から全部見てて、大好きな話を何回も読み返しています!どんなに遅くても良いので続編希望します! (2019年6月28日 0時) (レス) id: 70c1150dfd (このIDを非表示/違反報告)
ポリフェノール(プロフ) - あいぴょん♪さん» 初めまして、コメント誠にありがとうございます。ご返信遅れまして大変申し訳ございませんでした。自分もフィッシャーズさん大好きです、応援ありがとうございます! またお暇な時に覗いてくだされば幸いです。 (2018年9月24日 21時) (レス) id: 77269a22b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポリフェノール | 作成日時:2018年6月13日 19時