【Fischer's】水魚之交 III【短編集】

モトキ：鍾愛 ページ31

私の彼氏は、彼氏になった途端素を見せ始めたと言うか、私の事に対して過剰になった。

「A起きて、ほらご飯も出来てるし、今日着る服も選んでおいたから。」

傍から見れば普通かも知れない。でも

「服脱がすよ、ばんざいは？」
『は、恥ずかしいよ』
「早くしないと遅刻するよ？ほら」
『う、うん』

「そこ立って、そういい子。じゃあ口開けててね」
『そこまでやってもらわなくても』
「いいからほら、あーんは？」

着替えまで彼が脱がせて着せて、歯磨きも彼が磨いて、髪も彼が結び、ご飯も食べさせて、靴も履かせて、扉も彼が開き、車で送り迎えする。

何もかもモトキが私の世話、まるで私はお人形のように立ったままで彼が全てやってくれる。それが一ヶ月も続いていて、私は恥ずかしさと奇妙さから、今日こそきっぱり断る事を決めた。

「Aおはよう、今日はデートでもしようか。服も俺好みで選んだんだ、脱いでこれ着て見せて？」
『ね、ねえモトキ』
「ん？」
『私、その、もうこう言うのはやめたい』
「どう言う事？」
『服脱ぐのも、トイレ行くのも、歯を磨くのも、ご飯を食べるのも、全部自分で出来るのに、その、モトキにそこまでしてもらうのはちょっと…嫌って言うか』
「…嫌、なんだ。」

寝巻きを脱がそうとするモトキの手が止まる。分かってもらえたのか、確かめようと顔を上げたその時

『う゛ッ…！』
「A酷くない? なんでそんな事言うの?」
『は、っなし、て…』
「好きな人を独占したい、もっと好きになりたいのは当たり前の事何じゃないの。何もかも知り尽くして、何もかも世話するのは当然でしょ?」
『くる、し』
「それともAは俺の事嫌いになったの?」

掠れた目で見えるモトキは瞬きも忘れ話し続ける

「俺はAを世話するのが全てなの。Aの全てを俺が助けてあげるそれだけが生き甲斐。だから」

「君を世話する為なら、このまま絞め続けて首から下を動かせなくさせてもいいんだよ？」
『……ッ、…！』
「そうすればAはずっと俺に頼らないといけない。俺もずっとAの世話が出来る。凄いWin-Winだよね。」
『ッお゛ぇ！ゴホッゴホ！』

漸く外れた彼の手のおかげで、足りなかった酸素が一気に取り込まれる。いつもと変わらない口調に戻ったモトキは、いつもより何十倍も狂気に満ちていた。

「痣出来ちゃったかな。でも大丈夫だよ、俺が綺麗に治してあげるからね…」

END：ヤンデレ：世話焼き型

　

マサイ：寵愛→←ンダホ：愛執

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