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君の名前は ページ4

「...作間龍斗?」


そう呼ばれた、声の持ち主を確認しようと振り返ると、
ベッドのカーテンの隙間から、あの桜色が見えた。


「あれ、君...」

「俺のこと、覚えて、ない?」

「ううん...覚えてるよ、ちゃんと」


吸い込まれるようにベッドに近付くと、そこには制服の
ジャケットを脱いだ状態で、ベッドに横になるあの彼がいた。

その顔を見つけた瞬間、ずっと聞きたかったことが口から
飛び出す。


「ね、名前、なに?」


その質問に、ふふ、と笑って、覚えてたんだ、と零す。


「俺はね、猪狩蒼弥」

「いがり、そうや?」

「そう。好きに呼んでよ」


じゃあ、と少し考えて、ガリさん、と言ってみる。


「ははっ、いいねそれ」

「俺のことも、あだ名で呼んでよ」


何となく、お互いあだ名で呼びあってみたくて、そんな
提案をしてみる。


「じゃあ、...作ちゃん!」

「うん、気に入った」


元々、友人たちから作ちゃんと呼ばれることは多かった
けど、彼に呼ばれるのは何故か少し違った感じがした。
何故かは、わからないけど。


「...てか、大丈夫?鼻血」

「あー、ボールが顔飛んできてさ」

「うわ、痛そう」


こっち来て座れば?、と少し横にずれて、ベッドに座れる
スペースを作ってくれる。
素直に甘えてそこに座ると、ベッドがきしりと音を立てた。


「...ガリさんは、いつもここにいるの」

「え?あー、うん。ちょっと体がポンコツでさ」

「そっか」


何が?とか、大丈夫なの?とか、そんなことを容易く聞けるような精神力は持ち合わせてないから、それ以上は踏み込まない。

知られたくないことだって、あるからさ。



「ガリさんって、何組?」

「6組」

「じゃあ、俺と一緒だ」


まじか、と少し嬉しそうに笑った彼。
俺も嬉しかった。...ということは、俺の後ろの席って。


「俺の後ろの席、ずっと空いてるんだけど、そこが
ガリさんの席かもな」

「まじ?...腐れ縁、だな」

「かもな」


入学式に桜の木の下で出会った彼は、保健室のベッドの
上にいた。

俺がこうして鼻血を出してここに来なかったら、まだ暫くはここにいることを知らなかったかもしれない。

だから少しだけ、ボールを高く飛ばしたやつに感謝を
したくなった。


「...教室、来ないの」

「んー...作ちゃんがいるなら、行こうかな」

「じゃあ、待ってる。約束な!」


うん、と頷いた彼に、嬉しくて笑いかけた。

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作者名: | 作成日時:2023年2月17日 12時

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