15 [皮肉と口付け] ページ15
『うう…息が詰まりそうだった…。』
飛行船から降りたAはオレの前でぼそっと呟いた。
「あはは。Aったら顔に寝不足って書いてあるよ。」
顔を覗いたらいかにも寝不足ですよって顔だったからそのまま言葉にするとAは困った顔をした。
『全然笑えないから。』
あいかわらずAはおもしろいなあ。うける。
オレたちがヨークシンを出発して約2日と半日が経った。ようやくクカンユ王国に辿り着いて今日の宿を探すところ。
この2日間は退屈だったなあ…。まったく…。
せっかくトランプとかゲーム持ってきたのにAは団長にビビりすぎてそれどころじゃないし、団長は団長でずーーーっと本読んでるしさ。2人とも俺の事見えてないのかなって思ったよ本当。
…今日は早めに宿で休もう。
「んー。この辺の宿は…」
「あっちじゃないか？」
後ろを歩いていた団長が前を歩き始めた。
私服の団長って久々に見たな。ロング丈のカーディガンが似合っている。オレはああいう服は似合わないからなー。
団長が前を歩くと自然とAはオレの後ろへ回り込んだ。やっぱ警戒してる猫みたいだな…。思わず笑う。
『シャルナーク私の事バカにしてるでしょ…』
「えー。バカにしてるつもりはないけどな。」
『そう言って笑ってるじゃん…む、むかつく…』
「ごめんごめん。」
『きのこ頭。』
「うりゃっ」
『いだっ』
ーーー
「今日は各自休息を取るとしよう。明日は7時に出発する。」
「了解。じゃ、お疲れ様ー。」
オレは2人にヒラヒラと手を振り部屋へ入った。…あ、残りの2人ってもうひとつ上の階なんだっけ？大丈夫かな。
…というか、団長ってあんな怖い感じだったか？
オレは部屋の中で腕を組んで考えた。
確かに優しくするのもそれはそれで変だけど、Aに対しての態度はあまりにも冷たい。そもそも蜘蛛にとって害がある人物を団員を使ってまで連れてくるか？
「団長は何考えてるんだ…？」
それにAが感じている異常なほどの恐怖感は一体なんだ？団長が念か何か使ってるわけでもなさそうだし。
謎だな。
オレはもう一度部屋の入口に向かい、ドアを開けた。ちらりと外を見やる。
…誰もいない。もう2人は各自の部屋に行ったのか。まぁ、フェイタンじゃあるまいし、ましては団長だし、大丈夫か。
やたらAのことを心配する自分がいることを自覚しながらもオレは別のことを考えるようにした。
「シャワーは朝からでいっか。寝よ。」
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作者名：ry | 作成日時：2019年11月26日 22時
