私と彼 3【宮侑】

26 高2のバレー ページ44

｢(あー、乗り過ごした)｣






ぼんやりと広場で寛いでいると、

帰る電車を乗り過ごしてしまっていたようだ。

このまま、ここで時間を潰すのもいいと思うが

それも暇になるから、

他のサークルのところを回って見ることにした。






｢(私もなんか入ってればなぁ)｣






中学、高校とも部活には入らずに

のほほんと放課後を過ごしていた。

本当に暇になれば、受けた授業の復習を

ちょろっとやって飽きたらスマホをいじる。

なんとも味気ない放課後を過ごしたものだ。






｢(このまんま行くと...)｣






真っ直ぐ歩くと、男の人たちの声と

靴の擦れる音、ボールが壁に当たる音が聞こえてきた。






｢(ここの階段登るとギャラリースペースやったっけ)｣






階段を登り、上がった先の扉を開けると

上から体育館全体が見渡せた。

そこには、バレーをやっている人達がいる。






｢(あいつどこやねん。)｣






柵に体を預けて、彼を探すがどこにも

見当たらない。

あいつ今日サークル出てへんのかい。






｢腹減ったわー動けーん｣

｢侑、昼食べてたやろ！｣






奥の方から間の抜けた声が聞こえてきて、

見てみると彼だった。

周りの人たちは、その一言でケラケラと

楽しそうに笑っている。






｢ふふ (楽しそう)｣






1人で笑っていると、

彼が気付いたようにこっちを見た。

やばいと思った時には遅い。






｢Aー！｣

｢あー、はは。がんばー｣






手をぶんぶん大きく振っているその様は、

なんだか子どもを見ているようだ。

しかし、｢集中せえ！｣と先輩らしき人に

頭を叩かれてしまっていた。







｢(私のせい...か？)｣

｢Aー！｣

｢なにー？｣

｢帰ったらあかんでー！｣

｢待ってろと言うのか｣







まあ、バレーはやるよりも見る方が好きだ。

それに時間もあるし、

ここは侑のバレーを見ているとしよう。






｢おお｣






バレーの練習が再開すると、

ゲーム形式でプレーしていた。

当たり前だがみんな上手い。

私は感嘆の声をあげた。






｢(バレーか。懐かしいな)｣






高2のころ、無理やり侑に連れられて

体育館で治くんと私と侑でバレーをした。

侑からきたサーブを足で蹴り上げて

天井にハマったが、卒業するまで

そのボールは落ちてくることはなかった。






｢(みんないる前でキスしてくるし、
はちゃめちゃやったなぁ。)｣






侑の練習を見ながら、

私は思い出に浸っていた。

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