私と彼 3【宮侑】

23 隠し事 ページ41

目を開けると、ぼやけているが

侑の胸板が目に飛び込んできた。

寝息が聞こえてくるから、

多分まだ眠っているのだろう。






｢(眼鏡ないと不便やな)｣






背中に回っている逞しい腕をゆっくりと退けて

なるべく音を立てないようにベッドから降りた。






｢い''っっっっっっ！？｣






小指に強い衝撃。

リビングに向かう最中、

ベッドの脚に小指を勢いよく

ぶつけてしまったようだ。

痛すぎてしゃがみこんでいると、

ぶつけた衝撃で侑が起きてしまったようだ。






｢んん...？何してるん...？｣

｢...ちょ...っと待っ...くぅっ｣

｢何と戦ってるんやお前は｣






痛みを我慢して立ち上がり

そのまま前に進む。






｢あだっ！｣

｢あ〜あ〜...｣






が、見事におでこに壁がクリーンヒット。

ゴツッという鈍い音が部屋に響き、

今度は頭を抑える。






｢おいおい大丈夫か？｣

｢ちょ、侑。私のリュックから眼鏡持ってきて｣

｢分かった、大人しく座っとき。｣




・

・

・

〜侑side〜






Aに頼まれた眼鏡を取りに、

部屋に入るとすぐ側に学校に持って行っている

リュックがあった。






｢(これか...ん？なんやこのパリパリの紙)｣






眼鏡を取ると、底に小さく折られている

パリパリの紙があるのを見つけた。

昨日の雨で濡れてそのままにしていたんだろう。

見事にパリパリだ。






｢(なんや？学校の単位か？)｣






見てはいけないと思っても、

黙って見てしまうのが人間というものだ。

俺はその紙を取り、ゆっくりと開いた。






｢(読めな...あ、ここ眼科ってかいてる)｣






雨で濡れてインクが溶けていたが、

ところどころは残っている。

よく見てみれば病院の診断書のようだ。






｢(角膜...損傷...？)｣






名前を見てみると、

インクでぼやけてはいるが

金橋Aと書かれていた。

なんや、角膜損傷って。






｢(そういえば昨日...)｣






俺は昨日の彼女の様子を思い出していた。






『手で...覚えようと思って...』

『顔。侑がいない日も、私が思い出せるように』






なあ、それってどういう意味で言うたん。

思い出せるようにって、どういうことやったん。

もしかして、角膜損傷ってのは事故の後遺症？






｢侑ー？あったー？｣

｢！お、おお！あったでー！｣






急いでその紙を元に戻し

俺は彼女の元に戻った。

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