私と彼 3【宮侑】

18 冷たい雨 ページ36

いいですよー、と言われ顔を離した。

すると、先生の顔は神妙な面持ちだ。





｢事故にあったとか、頭を強くぶつけたことがありますか？｣

｢はい、夏に事故にあいました。｣

｢...そうですか...｣





事故にあった出来事を言うと、

さらに先生の表情が曇る。

一体、なにがあったの。





｢確かに、角膜の大きな損傷が見られました。｣

｢...そう、ですか...｣

｢視力が下がったのはこれが原因でしょう｣

｢治るんですか？｣





話している唇が微かに震える。

私の不安を察知したのか、

先生も暗い表情になってしまった。、






｢残念ですが...角膜は治りません｣

｢...｣

｢それにこのままだと...｣






先生が言いかけたことを

私は聞き逃さなかった。






｢このままだと、なにがあるんですか？｣

｢金橋さん｣

｢先生、どうなるんですか？｣

｢...いいんですか、言っても｣






先生の様子を見てみる限り、

いい知らせではなさそうだ。

でも、ここまで聞いてしまっては

あとにも引けない。






｢教えて下さい｣

｢落ち着いて聞いてくださいね｣






私の息を飲む音が部屋に鳴った。

先生も落ち着こうとしているのか、

自分のズボンをぎゅっと握っている。






｢おそらく、いつ目が見えなくなっても
おかしくないでしょう。｣

｢...失明...ってことですか｣

｢残念ですが...｣






頭の中は真っ白になり、

途端に体が重くなった。

まるで、鉛をつけられているみたいだ。







｢手術というのも可能ですが、
生きた人からは移植が出来ません。
ですから、ドナーの人が見つかり次第となります。｣

｢...それで...見えるようになるんですか｣

｢いつになるかは...約束出来ません｣

｢お金なら払います...だから...っ｣

｢私も出来る限り協力しますから｣






失明って、見えなくなるってことでしょう？

凛子の顔もゆっちゃんの顔も、

お父さんお母さんの顔も、侑の顔も。

大切な人たちの顔が見えなくなるってことでしょう？



・

・

・




診察が終わり、病院から出ると

さっきまで晴れていたのに雨が降っていた。






｢(...冷たい)｣






傘を持っていない私は冷たい雨に

濡れながらフラフラと歩き出した。

顔を流れているのは、涙なのか

雨なのかもわからない。






｢...もしもし、お母さん...私...あのね...っどうしたら...っ｣






神様、私はどうすればいいのですか。

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