私と彼 3【宮侑】

15 首にチクリ ページ15

｢あー、すっきりした｣





独り言を言いながらリビングに入ってきた侑。

言葉のとうり、さっぱりしたようだ。

私はジャガイモの皮を剥きながら様子を伺っていた





｢(カレーのルーはどこやねん)｣

｢何か探し物か？｣





カレーのルーがないことに気づき、

調味料の棚の扉を開いて探していた。

すると、隣から侑がやって来た。





｢なあ、俺な、無視はアカンと思う｣

｢...｣

｢ほら！また無視や！｣





少し笑いながら言うこいつは、たいして気にしていない。

なんやつまらん。

あ、ルーあった。





｢カレーか｣

｢邪魔やからあっち行って｣

｢なあなあ、ごめんて｣

｢はいはい許しますんで、あっち行って｣





カレーのルーも見つかったことだし、

もう一度野菜の皮を剥いていると

後ろから私の手を大きな手が包み込んだ。





｢すまん｣

｢ええって言うたやん｣

｢ほんまに今日汗臭かったんやって｣





体がベタベタしているときは

あまり触られたくないとのことだ。

だから、離さない私に｢うざい｣と言えば

離すだろうと思って言ったらしい。





｢わかったから、手離して｣

｢んー？｣

｢もう、ええ加減に＿＿＿｣





手を離さないこいつに、

私は振り向くと、すぐ側に侑の顔があった。

目がバチッと合ってしまった。





｢やっとこっち見たな｣

｢...あっ｣





スルスルと手から包丁とジャガイモが取られ、

まな板の上にとんと置かれる。

どうしようもなくなり、目を逸らすことしか出来なかった。





｢...っ｣

｢こっち見て｣





こそばゆい感じでゆっくりと私の頬に

手が伸びてきた。





｢離して｣

｢嫌や｣

｢ご飯作れん｣

｢あとでもええって｣





その声はさっきのふざけていた声とは違い、

耳元で話すから、声が低く、かすれていて

妙に色っぽく感じる。





｢さっきと違って塩対応やな｣

｢さっきはさっきやし｣

｢ふっふ、気まぐれやなぁ｣





嘘。

めちゃくちゃ抱きついたりしたいけど、

さっきの手前、安易にできない。





｢あっ、ちょっ｣





無理やり侑のほうに体を向けられたかと思えば

首元に熱い吐息がかかった。

恥ずかしいし、こちょばしい。

逃げようと思えば足の間に侑の足が入ってきた。





｢(ま、股ドンやんけ)｣

｢あー、可愛い｣

｢あっ、やめっ｣





首元にチクッとした痛みが走った。

こいつ、まさか。





｢ふっふ｣

｢最悪｣

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