【募集企画】IDOL in Grand Cross【本編～日常編】 (ページ17)

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ピロン……

雑談を交わすアリスのポケットで、電子音が鳴る。
プライベートで使っている携帯電話にメッセージが届いたようだ。

“今日は帰って来る？”

思わずスマートフォン画面の時計を見た。
時刻は朝３時を回ったところ…こんな時間まで“彼”は起きていたのだろうか。
アリスはカレンダー共有アプリを開き、“彼”の予定を確認する。

(ああ、深夜番組の出演があったのね)

“お疲れ様。今日はルイの家に帰ろうかな”
“待ってる”

間髪入れずに返事が返って来る。一言とは言え、打ち込みスピードがアリスの比ではない。

(返信、早いなぁ…)

そんな事を考えている間にも、次のメッセージが届いていた。

“頑張って”
“有難う。ルイもお仕事帰り、気を付けてね”

アリスがメッセージを送り終えるとほぼ同時に、再びメッセージが届く。

“やっぱ、頑張りすぎ禁止。最近忙しくて全然僕に構ってくれないよね？寂しいなぁ、帰ったらギューってしようよ”

「―――……」

思わず綻んでしまう口元を、スマートフォンで隠すアリス。
こんな甘いメッセージを見れば、疲れも吹き飛んでしまう。

「はい、救急室―――…10分後、救急車ですか。え、多重事故？！」

背後で聞こえる後輩の強張った声に、アリスは立ち上がりインカムをセットした。
後輩の視線を受け、病棟応援に行っていた当直看護師達を呼び戻し、素早く受け入れ態勢を整えていく。

情報共有パットに打ち込まれていく搬送患者の概要を確認すると、即座に関係各所に一報を入れた。多重交通事故…重傷患者が３名同時に搬送されてくるという。

どうやら、メッセージにあった“頑張りすぎ禁止”は、無理そうだ。

「帰ったら、ぎゅーってしてもらうんだから…」

レモン色の長髪を手早くアップにまとめると、アリスは、駆け付けてくれたスタッフに、てきぱきと指示を出す。

―――さぁ、前を向け。目前のタスクに集中しろ……
　最善の力を持って、やり遂げろ。

・
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「ただいま帰りました……」

声を潜め、アリスはそっと玄関ドアを開けた。
夜明け前からの救急コールはその後も鳴りやまず、後輩は先に帰らせたものの、日勤帯への申し送りと記録を終えれば、こんな時間になってしまった。
これでは、後輩から”呼ぶ人”(救急患者を呼び込む人)と言われても仕方がない。