棗の幼馴染みは健気な美少女？！-2-

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舞台は順調に進んでいった。仏頂面の棗が何かセリフを言う度客席からは小さな黄色い悲鳴が聞こえてくる。多分ユーリが王子役であったことなどもう忘れているのだろう。彼の口角はぴくりともしない。
舞台裏でもっと笑ってと口パクで指示を出す鳴海は綺麗にスルーされていた。

そして物語の終盤。鳴海はスケッチブックをめくり新たなカンペを書く。


め、ざ、め、の、キ、ス、を、


真っ白なスケッチブックの上を滑る黒いペンはそう順番に現れた。目覚めのキス。


｢やっぱり棗くんだけだと弱いかなーって思ってさ｣


にこっと笑う鳴海。彼の見る先にいる役者は冷たい視線でこちらを見ている。


｢おい、そんなこと｣


ルカが鳴海のカンペを奪い取ろうと動く。一花は不意に動かれたためその場でぐらんとよろけバランスを崩してしまった。その衝撃でルカと体が離れる。


｢あ、取れた｣


こんな状況で自由になっても困る。だがドレス姿のルカは反射的と言ったらいいのだろうか、体が動いてしまったとでも言うような様子で照明のあたる場所に出ていった。


｢あれ、乃木ルカじゃない？｣

｢え？｣

｢ほら、元のお姫様役の｣


客席からはそんな会話が聞こえた。そして棗が唖然としている間にルカは舞台の真ん中にいる2人に近づいた。


｢おれ……、じゃなくて……私と結婚しなさい！｣


ルカは王子の棗にそういうと襟元を掴んで唇を無理やり重ねる。舞台裏が慌ただしくなりその間に幕を下ろすよう指示が出た。

客席からは黄色い悲鳴がより増して聞こえてくる。一部の層の方々に受けたらしい。1部、ではないか。


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