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不意に、開けっ放しの窓から冷たい夜風が吹いてきた。
春とはいえ、夜は冷える。
窓を閉めながら外を見れば、朧月が浮かんでいた。
思い切り光りもしなければ、闇に隠れもしない。
中途半端で、頼りない月は僕みたいで。
月を隠すように、急いでカーテンを閉めた。
リビングの電気を消して、
玄関の鍵がちゃんと閉まっているか確認したら、寝室へ向かう。
寝室といっても、そんなに大きいアパートじゃ無いから、
リビング、ダイニングの他には一つしか部屋が無くて、
その部屋をカーテンで二つに仕切ってるだけ。
布団を敷いたら殆ど埋まる程のスペース。
カーテンで仕切っただけのこんな狭い所しか、
この家には自分の場所が無い。
年頃の女子が兄とこんな家で二人暮らしなんて、
きっとAは嫌だろうなって、
他の友達の家を羨ましく思ってるだろうなって。
気持ち良さそうに眠ってるAの顔を見ていると、
こんな生活しかさせてやれない自分が情けなくて嫌になる。
もしかしたら、
父か母に付いて行った方がAは幸せだったかもしれない。
でもAは絶対に不満を言ったりするようなことはしないから、
だから逆に苦しくて、申し訳なくて。
だけど、だから手放せない。
布団に入って、少しカーテンを持ち上げると、
向こう側を向いて寝ているA。
「A、」
好きやで、っていう言葉は、
Aが起きているかもしれないと考えたら怖くて、
喉につっかえた。
「ごめんな」
二人きりの狭い部屋に、
時計の針が動く音と、僕の頼りない声だけが響いた。
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作者名:みなみ | 作成日時:2018年3月7日 21時