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波の音が聞こえる。




「ねえ、お兄ちゃん見て、貝殻沢山拾ってん!」

「綺麗やなあ、何処にあったん?」

「あの岩の向こう!
この間流星くんがあそに貝殻沢山あるんやって教えてくれたんやで?」

「…流星と海、来たん?」

「うん、この間連れて来てもらってん」




ランドセルを背負ったAと、
褪せた制服の僕。


次の春に、小学校を卒業するAは、
背も伸びてきたし、髪型も気にするようになって。




心の底からその笑顔や、仕草が愛おしい。



妹という前に、一人の人として、
Aを手放したくない。

ただ、それだけ。








少し前に僕達の家の近所に、
Aより二つ年上の流星という男の子が引っ越してきた。



Aは、自由奔放で少し変わり者の流星にすぐに懐いた。


また、僕達も流星も、親が共働きだったこともあって、
学校終わりに二人でAと遊んであげるのが習慣になっていた。


流星は、気付けば僕にとっての弟、
Aにとってのもう一人の兄のような存在になっていた。



でも、大学受験が近付いてきてからは、
三人で会わない日も増えていて。

僕は大人気もなくモヤモヤしていた。


今思えば、この時既に僕のAに対する気持ちは、
少しずつ膨らんでいたのかもしれない。




僕の知らない時間を二人が過ごすことに、
僕は不安になっていた。








今日は塾が無かったから、
久しぶりに近所の海にAを連れて遊びに来たのに。

この海にも、僕の知らない二人の思い出がある。





大きな海を目の前にして、
自分の小ささに嫌気がさす。




きっと僕は普通の兄になんてなれない。


流星だったら、こんな気持ちにはならないで、
Aを守るのだろうか。







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作者名:みなみ | 作成日時:2018年3月7日 21時

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