境界 ページ3
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夕方と夜の、橙と黒を繋ぐ境界で、
藍色の空が揺れている。
昨日は遅くまで残業だったけれど、
今日は定時で会社を出ることが出来た。
無理しなくてええんよ、と僕は言っているけれど、
Aは毎日晩御飯を作って僕の帰りを待っている。
早く帰りたくて、早く会いたくて。
今日は何作ってくれてるんかな、と考えるだけで、
自然と頬は緩み、足取りは軽くなる。
近付く小さなアパート。
僕ら二人の家。
見上げればぼんやりと部屋に明かりが付いているのが見える。
その明かりを毎日見る度に僕は、
Aと一緒に暮らせるだけで幸せで。
僕の帰りを待っているAが居るだけで、幸せやと。
胸がきゅっと苦しいような、温かいような。
どうしようもない気持ちが込み上げる。
「ただいま」
「お帰り！今日早いね！」
嬉しそうに笑って僕の元に来るAは、幼く見える。
泣き虫だった小さい頃のAの面影は、抜け切っていない。
やっぱり可愛いな、と思うこの気持ちが、
妹としてなのか、女の子としてなのか。
そんなの僕にだって分からない。
特に、昔の僕は、自分で自分が分からなくて、
一人でずっと悩んでいた。
これは恋なのか、愛なのか。
愛なのだとしたらこれは、家族愛なのか、恋愛感情なのか。
今だって何時も、何処からが恋なのか、見えなくなる。
でも、ずっと悩んでいたあの頃の僕は、
これはきっと恋なのだと。
Aに触れたくて仕方が無いのは、
ずっと隣に居たくて仕方が無いのは、
Aを、女として愛しているからだと。
自分の気持ちを素直に映し出した向こう側に。
今居る此処に。
境界を越えた時、僕は、僕を見つけた。
偽りも誤魔化しも無い、本当の自分を。
何時だって、偽らなくてはいけないことも。
誰かの前では、誤魔化さなければいけないことも。
全部気付いていた。
けれど、境界の先にあったのは、
そんな苦しみを包み込んでしまうような、
強くて優しい想いだった。
それは、他人から見れば、美しくなんて無いかもしれない。
汚いと、軽蔑されて、非難されるかもしれない。
でも、僕にとって一番綺麗なんだったら、
それでいいと思った。
そう信じて、生きてきた。
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作者名：みなみ | 作成日時：2018年3月7日 21時
