検索窓
今日:9 hit、昨日:13 hit、合計:36,522 hit

表情 ページ11

·




「しげは好きな人おらんの?」



しげの気持ちを知ったのは、俺達が大学生の時だった。



「…好きな人は、…居らん」

「嘘つけ、ほんまのこと言ってや」



俺は、まだ何も知らなくて。

軽率だった。



「…居る」

「やっぱり。誰?俺も知ってる人?」




「A」




真っ直ぐに俺のことを見てそう言った時のしげの目が、
未だに忘れられない。



「え?」

「Aが好き」

「…Aってしげの妹やんな?」

「せやで」

「ははっ、そういうんちゃうくて、
恋してへんの?って聞いてるんやけど、」

「せやから…妹としてじゃなくて、Aのことが好きやねん」



「…えっと、ほんま?」

「…嘘、やったら良かったんかな。…こんな嘘なんかつかへんよ」

「そうなんか、」




お調子者で底抜けに明るいしげが、
こんな表情をするなんて知らなかった。



「ごめん、しげ。俺知らんくて、」

「ええねん、淳太には言おうかなって。ずっと考えてたから」

「他に知ってる人居るん?」

「誰も居らんよ、淳太だけ」




一人で抱えるには、大きすぎて、重すぎるから。




「淳太にだけはさ、相談してもええかな。
頼っても、ええ?」

「ええに決まっとるやん」

「ありがとうな」



そう言って笑った表情はもう、いつも通りのしげに戻っていた。



「淳太、誰にも言うたらあかんで?」

「当たり前やろ」



少しでも、力になりたかった。

でも、どうするのが一番二人にとって良いことか、なんて、
全く分からなかった。







·

・→←想いは、



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
252人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みなみ | 作成日時:2018年3月7日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。