表情 ページ11
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「しげは好きな人おらんの?」
しげの気持ちを知ったのは、俺達が大学生の時だった。
「…好きな人は、…居らん」
「嘘つけ、ほんまのこと言ってや」
俺は、まだ何も知らなくて。
軽率だった。
「…居る」
「やっぱり。誰?俺も知ってる人?」
「A」
真っ直ぐに俺のことを見てそう言った時のしげの目が、
未だに忘れられない。
「え?」
「Aが好き」
「…Aってしげの妹やんな?」
「せやで」
「ははっ、そういうんちゃうくて、
恋してへんの?って聞いてるんやけど、」
「せやから…妹としてじゃなくて、Aのことが好きやねん」
「…えっと、ほんま?」
「…嘘、やったら良かったんかな。…こんな嘘なんかつかへんよ」
「そうなんか、」
お調子者で底抜けに明るいしげが、
こんな表情をするなんて知らなかった。
「ごめん、しげ。俺知らんくて、」
「ええねん、淳太には言おうかなって。ずっと考えてたから」
「他に知ってる人居るん?」
「誰も居らんよ、淳太だけ」
一人で抱えるには、大きすぎて、重すぎるから。
「淳太にだけはさ、相談してもええかな。
頼っても、ええ?」
「ええに決まっとるやん」
「ありがとうな」
そう言って笑った表情はもう、いつも通りのしげに戻っていた。
「淳太、誰にも言うたらあかんで?」
「当たり前やろ」
少しでも、力になりたかった。
でも、どうするのが一番二人にとって良いことか、なんて、
全く分からなかった。
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作者名:みなみ | 作成日時:2018年3月7日 21時