悪夢 ページ6
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「ねえねえ、もう。起きて」
身体を揺さぶられる感覚で目を覚ました。
僕の隣で、布団が少しはだけて、
剥き出しの鎖骨や肩が露わになっているAが、
心配そうにこちらを見ている。
「あ、…おはよう」
「おはよ。大丈夫？」
「何が？」
「うなされてた」
あの時の記憶をなぞる夢。
僕にとっては、何よりの悪夢だ。
「大丈夫、」
掠れた声で呟きながら、Aの首元まで布団を引っ張り上げる。
一線を超えてしまったその日に、流星の夢を見るなんて。
神様からの罰なのだろう。
でもいい。
僕はもう難しく考えることは辞めたんだ。
流星が眠ったあの日から、今年で三年が経っている。
今も流星は目を覚ましていない。
実家の近くにある小さな病院に入院したままの流星。
大学の頃は時折顔を見せていたが、
正直流星の姿を見るのは心苦しくて。
就職して実家を離れてから流星のお見舞いに行ったのは、
先日を含めて二回だけ。
正直、眠り続ける流星の顔を見た時、ほっとした自分がいた。
もし目を覚ましたら、
今度こそ絶対、Aは流星のものになってしまいそうだから。
Aは、僕がこんな人間だと知ったら、離れていくんだろうな。
怖くて、布団の中でぎゅっとAを抱締める。
衣服を纏っていないAの素肌が、僕の素肌に触れて。
その感触に僕は、束の間の安堵を憶えた。
大丈夫。
Aは僕の腕の中に居る。
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作者名：みなみ | 作成日時：2023年6月20日 16時
