君との未来 ページ29
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ベランダに出てから、何時間が経ったか分からなかった。
生温い風さえ、冷たく感じるのは、
僕の頬が濡れているからだろうか。
いつの日か、テーブルの上にあったAの進路希望調査が、
白紙だったのをぼんやり思い出す。
こんな日に限って、星は綺麗で、
また僕は一つ、惨めな理由が増えた。
Aとはあの後、凪のような時間を過ごした。
嵐が過ぎ去った後みたいに、
そこかしこに傷が残っているのに、妙に静かだった。
普通に並んでご飯を食べて、
会話こそなかったものの、先お風呂入るね、とか、
そんな言葉は普通に交わした。
Aはもう、寝ている。
冷蔵庫の中のケーキは、まだ僕のことを、
あの出来事は現実だったんだって、引き留めている。
Aは本当に、彼奴と何も無いんだろうか。
冷静になって考えてみる。
それでも、やっぱり胸は苦しいまま。
次に、僕たちが幸せになる方法を考えてみる。
そして、Aは、一度離れるべきだ、と考えた。
僕たちは、これ以上今の状態で傍に居てはいけないはず。
Aは、やっぱり離れたくないって言うかもしれないけれど。
とにかく今は、手探りのままでも、
残りの高校生活を穏便に過ごして。
その後一旦、少し離れて。
それから、僕たちが幸せになる方法を見つけるのが、
一番現実的で、お互いの苦しみも小さい気がする。
そしていつかは、出来ることなら、
また二人で暮らして、幸せって心から笑い合いたい。
一旦離れるのは、あくまでそんな未来の準備のためで、
僕はAとの未来を諦めたわけじゃない。
むしろ、諦めていないから、そうするべきだと思ったんだ。
明日こそは、外にご飯を食べに行こうか。
Aの話を、ちゃんと聞こう。
彼奴のことも、何処に出掛けていたのかも。
まずは、一歩一歩。
進むべき方向が見えた気がしたら、妙に心は穏やかだった。
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作者名：みなみ | 作成日時：2023年6月20日 16時
