グランド・フィナーレ〈赤〉第二章 (ページ23)

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「Aの様子、どう？」

「うん、思ってたより元気で、安心してる」

「良かった」

もう布団に入っているAに会話が聞こえないように、
静かにベランダに出て、窓を閉める。

エアコンの効いた室内から外に出ると、夜なのに蒸し暑かった。

「部活とかで生徒に会ったりするけど、
Aの噂、もうあんまり聞くことなくなってきた。
このまま夏休み明けには落ち着いてるとええんやけど」

「なあ、淳太。ありがとう、ほんまに」

「何やねん急に」

「淳太はさ、あの写真見ても、責めるどころか、
こうやって助けてくれてさ」

「当たり前やろ」

「A、僕に気遣って、
最近学校の話とか殆どせえへんくなってたから。
淳太が居らんかったら、僕は気付かんままやったかもしれん」

「俺は、しげには幸せになってもらいたいねん」

「…うん、ありがとう」

「やけに素直やな、今日は」

「何やねん、いつも素直やんけ」

「どこがや」

淳太と話しながら、改めて僕は、
Aのこの家の外での姿を全然知らないんだなって、実感した。

Aの心の中に、僕以外にどんな人間がいるのか。

何を考えているのか。

もっと知りたい、と同時に、知るのは怖くもある。

だから、Aを縛ることでしか、心が静まらない。

Aは、男の話はおろか、
クラスメイトの話すらしなくなっていたから。

大人げない自分をまた、嫌いになった。

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