光と影 ページ21
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夏休みに入って、五日が経った。
しばらくは学校のことを気にしなくていいという気持ちからか、
空元気なのかは分からないけれど、
とにかくこの五日間、Aはいつもの様子を取り戻しつつあった。
今日も、家に帰るとAはぴょこんと玄関に顔を出して、
僕を笑顔で出迎えてくれた。
ダイニングテーブルには、カレーが並んでいる。
冷めたご飯を食べるのが苦手な僕のために、
Aは毎日必ず、僕の帰るタイミングに合わせて、
ご飯を準備してくれている。
残業があっても、ちゃんと連絡さえすれば、必ずそうしてくれる。
「A、ありがとうな。いっつも」
「何？急に」
きょとんとしたAの、
口の端に付けているご飯粒を取ってあげながら、
「ご飯、必ず出来たてやん」
と言う。
「ふふっ、やって、冷めたの食べれないやんか」
「うん」
「それにな、私、家事するの結構好きやねん。特に料理は。
毎日何作ってあげようかなって考えるのも楽しいし、
何より、一番美味しい状態で食べてもらいたくて。
毎日残さんで食べてくれるから嬉しいねん」
「なあ、A。ええねんで。
ずっとこの生活でも。Aが良ければ」
「…え？」
「学校、夏休み終わっても行きたくなかったら…行かんくてええ。
大学とか、就職とか、もう嫌になったら、…僕が養うから。
それでもええんやで。
Aがそうしたいなら」
「…うん」
「僕は、Aのご飯、食べられるだけで幸せやねんから」
「ありがとう」
Aは、笑っている。
けれどそのはずなのに、
その表情の何処かに翳りが見えたのは、僕の気の所為だろうか。
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作者名：みなみ | 作成日時：2023年6月20日 16時
