グランド・フィナーレ〈赤〉第二章 (ページ18)

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染色ページ18

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Aの様子がおかしいことに気が付いたのは、
出掛けた日から二日経った、火曜日のことだった。

月曜日の朝は、この一週間が終わればやっと夏休みだ、ってはしゃいでいたはずなのに、昨日の夜からAは何を話しかけても上の空で。

今日の夜はついに、表情が消えていた。

「A」

「何？」

晩御飯を食べる手を止めて、Aを見つめる。

Aの食事は、何も減っていない。

「どうしたん」

「…何も無い」

「…言えへんこと？」

言いたくないと言わんばかりに閉ざされた口とは裏腹に、
テーブルの上では僕の手をぎゅっと掴んでいる。

Aが言える時まで何時間でも待とうと、
Aの隣に椅子をずらして座り直した時。

タイミング悪く電話の音が響く。

画面を確認すると淳太からの着信だった。

淳太なら後でかけ直せばいいと思ったけれど、
一瞬、画面に表示された淳太の名前を見たAの顔が、
歪んだことに胸騒ぎを覚えて、
僕は逡巡の後に、応答ボタンを押した。

「もしもし」

「あっ、しげ？良かった、出た」

「うん、どうしたん」

「どうしたちゃうやろ。大丈夫か？Aも、しげも」

「…え？」

「…もしかして、Aから聞いてないん」

「…何も」

「…二人がキスしてる写真が、学校で出回ってる」

その言葉の意味を理解できないままAを見ると、
彼女は静かに涙を零していた。

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