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周りの土地よりも少し低いこの場所は、
池や沼があちこちにあって。
その水辺では睡蓮の花が水面を埋めるように咲き誇っている。
木が多くて、普通の場所より涼しいこの場所は、
何だか別の国に迷い込んだみたいだった。
木漏れ日で、睡蓮が淡く煌めく。
「綺麗、」
「せやろ？」
「うん。連れてきてくれてありがとう」
目を細めて笑うAに愛おしさが込み上げる。
ちらほら人は居るけれど、家から少し離れているし、と思い、
その左手を握ったら、ぎゅっと握り返された。
一方的だった恋心が、返ってくるようになったことに、
未だに泣きたくなるくらいの幸せを感じる。
「ちょっと座ろうか」
木陰のベンチに腰掛けて、
Aと目の前にある池の睡蓮をぼうっと眺める。
そこは一面、白い睡蓮が咲き誇っていて、
白いワンピースを風に靡かせるAと、ぴったり重なる。
「睡蓮の花言葉って、何なんやろ」
「いや、分からん」
「私も」
「うーん」
二人同時に携帯を取り出して、
それぞれ、睡蓮 花言葉と打ち込む。
表示された白い睡蓮の花言葉を見て、
僕はそっと言葉を詰まらせた。
ちらりと横のAの顔を伺うと、
僕が今浮かべているであろう表情と、同じ色の表情をしていた。
どのくらい無言の時間が流れたかは分からないけれど、
その間僕たちの手はずっと繋がれていた。
「なあ、」
「ん？」
「僕たち、周りの人からどう見えてるんかな」
「恋人に、…見えてるかもね」
「僕たちの関係を知っている人からしたら、
そうやないかもしれんけど、
知らない人からしたら、普通の恋人と同じやんな」
「…うん、きっと」
「綺麗に、見えてるよな。白い睡蓮の前でも」
息は上手に出来なくて。
彼女は答えの代わりとでも言うように、
周りの目を盗んで、そっと僕に唇を重ねた。
白い睡蓮の花言葉は、「清純」だった。
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作者名：みなみ | 作成日時：2023年6月20日 16時
