縋 ページ12
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酷い頭痛で目を覚ました。
携帯を傾けると、5:05と表示されていて、
外はもう明るくなっている。
安くさいシーツの上で寝返りを打とうとすると、
巻かれた女の腕が邪魔で、僕は無言でその腕を掴んで、
腹部から離した。
起き上がって目を擦り、もう一度携帯を見ると、
Aからの不在着信が、一件だけ。
もっと、呆れるくらいにかけてきてくれたら、
僕はこんなことをしなかったのか。
いや、掛かってこないと分かってたから、したんだ。
Aは、決して僕に縋らないだろう。
何があっても。
こんなに怖い恋が、この世にあるんだろうか。
煙草臭いワイシャツを不快に思いながらもう一度着て、
テーブルに一万円札を置いて部屋を出た。
鳥のさえずりが聞こえて、
水色と灰色を混ぜたような妙に淡い青色の朝の空を見上げると、
何だか吐き気がした。
歩けない距離でも無いし、電車ももう動き出していたが、
あまりに足が重たくて、タクシーを呼び止める。
住所を告げると、一気に疲労が襲ってきて、
僕は体を傾けて目を閉じる。
昨晩の行動が、浮気だと責められるような関係だったら、
どんなに楽だっただろう。
僕たちは、何処まで歩いていっても、恋人にはなれない。
周りの景色は変わっているかもしれないけれど、
あまりの暗闇で、どんなに歩いても分からない。
もしかしたら、その場で足踏みしているだけかもしれない。
だったら、いっそ。
離れてしまおうか。
アパートに着くのが怖くて、目を瞑る。
帰るのが楽しみじゃなくなったのは、いつからだっけ。
いいんだ、これで。
例え、Aが離れていったって。
昨日に時間を戻せるとしても、
僕は同じ選択を何度だってしたと思う。
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作者名：みなみ | 作成日時：2023年6月20日 16時
