嘘をつかないこと 2 (黒)

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-目黒目線-



『意味わかんないこと言わないの』



目｢ごめんごめん｣



ぼーっとしていたから名前を呼んで、振り返ったAの表情が付き合ってた時と何ら変わりがなかった。



思わず出たのは｢やばい｣なんてしょーもないリアクションだし、こういう時俺語彙力ねぇなって思う。



一瞬で昔に戻ったような錯覚に陥った。



会社で話す時は壁作られてるって感じるぐらい微妙な顔をしてたのに、今のAからそれは感じない。



『蓮、神社行くんだよね…？どっち曲がる？』



目｢あ、右｣



今度は俺がぼーっとしてたらしい。



困った顔で聞いてくるAが愛しくて、繋がっている左手に力が入った。



それでも嫌な顔はせずに一緒に歩いてくれている。これで嫌いだって言われても、何も説得力がない。



どう考えたって別れた理由が他にある。



『あ、ここ？』



目｢そう。やっぱり観光客多いね｣



『そうだね、賑わってる』



目｢……あれ…｣



境内の方を見つめるAの横顔を見ていると、いつの間にか離れてしまっている手。



名前で呼ばなかったことを口実に繋いでいたそれをもう一度繋ぎ直そうと手を伸ばすと避けられた。



俺が何かしたかと聞いても首を振るだけで、明確な返事は返ってこない。




目｢A？｣



『会社の女の人のグループが居たから、手放した方がいいでしょ。

付き合ってると思われちゃうし…目黒はフリーなんだって示しとかないと！』



目｢………｣



なんで他の女と付き合え、みたいな言い方すんの、A。

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